食品科学測定機器

水分活性計の選び方 2023年版

本ガイドは『Best Water Activity Meters 2023 - The Definitive Guide』を翻訳したものです。

ベストな水分活性計は?

水分活性を測定する人の中には、義務感から測定する人がいます。許認可のための数値のみを求めていて、水分活性そのもののにはあまり関心がありません。Amazonに直行して$600を支払い、あとは自社製品で誰も病気になる人が出ないように願うだけです。

しかし、食品や薬剤、パーソナルケア製品の製造業者の場合は安全性が生命線ですから、 製品の製造には極めて正確な水分活性測定装置が不可欠です。また、よく吟味して適切な測定装置を選択すれば、長期間にわたってその恩恵を受けることができます。なぜなら、ベストな装置は10年以上持つからです。

水分活性計選び=センサー選び

水分活性計の購入にあたっては数多くの種類があり、混乱することと思います。しかし、基本的には、4つの異なるセンサータイプから選ぶことになります:チルドミラー露点センサー、静電容量センサー、波長可変半導体レーザーセンサー、そして電気抵抗センサーです。

センサータイプを検討するのは重要なことです。なぜなら、水分活性計の速度(測定時間)や精度(正確さ)、耐久性、信頼性を決定づけるのはセンサーだからです。水分活性を直接測定するセンサー(チルドミラーやレーザー)は、電気抵抗や静電容量などの水分活性に相関する二次的パラメータを測定して水分活性に変換するセンサー(電気抵抗センサーや静電容量センサー)よりも短時間で、より正確な測定ができると言えます。

揮発性成分を含むサンプルを測定する必要がありますか?

ご存じのように、化学物質や溶剤を測定するのであれば専用のセンサーが必要です。しかし、エタノールやアルコール、酢、プロピレングリコール、一部のスパイスなど、空気中に揮発する成分も同様に、センサーに問題を引き起こします。

波長可変半導体レーザーセンサーは、揮発性成分に対応できるように特別に開発されたセンサーです。その他の全てのセンサータイプは揮発性成分の測定が困難です。なぜなら、揮発性成分がセンサーに干渉し、測定の速度と精度に悪影響を及ぼすからです。この問題は、揮発性成分を除去する化学フィルターを使っても解決しません。さらに悪いことには、電気抵抗センサーや静電容量センサーは、センサー自体がスポンジのような役割を果たし、測定チャンバー内の水蒸気を吸収または脱着する仕組みであるため、センサーが水蒸気だけでなく揮発性成分も吸収してしまい、センサーの応答が変化します。センサーが壊れてしまう可能性さえあります。

センサーと化学フィルターを組み合わせることで、揮発性成分を含むサンプルを問題なく測定できると言われている装置もあります。ところが、私たちが実施した試験では、この厄介な揮発性成分に対応することができるのは、レーザー式の水分活性計のみであることがわかりました。レーザーセンサーはチルドミラーセンサーほどの速度と精度はないものの、揮発性成分を含むサンプルを数多く測定するのであれば最適のものであり、他の選択肢は存在しません。

水分活性計の寿命は?

あなたがたった今、$10,000を払って実験装置を購入したとすれば、その装置ができるだけ長持ちして欲しいと願うことでしょう。そこで重要視されるのが製造品質です。私たちはAmazonで購入した他社の水分活性計をテストしてみました。価格は大変魅力的でしたが、使い始めて1週間もしないうちに故障してしまっただけでなく、販売者からのサポートは一切受けることができませんでした。

センサーの経年劣化が課題となるセンサーもあります。電気抵抗センサーや静電容量センサーは、そのスポンジのような特性が原因で、経時的に汚染物質を吸収してしまい、速度や精度が悪化していきます。私たちが検査した古いセンサーはその影響を明確に受けていました。そのため電気抵抗センサーを販売するA社は交換用センサーを販売していますし、静電容量センサーを販売するB社の場合はセンサーヘッドを丸ごと交換しなければなりません。それらの交換パーツにかかる費用は両社ともほぼ同額です(およそ$2,000)。

チルドミラーセンサーの場合、センサーの経時が速度や精度、安定性に影響を与えることはないようですが、万一センサーを交換する場合でも、その交換費用は他社の半分以下です。

測定時間と正確さ

1日あたりの測定数が2~3サンプルの場合、結局のところ測定に時間がかかる装置はお金がかかることになります。平均して、レーザーセンサーやチルドミラーセンサーは、電気抵抗センサーや静電容量センサーの10倍ほどの速さで水分活性を測定することができます。各センサーの速度と精度を比較する目的で実施した私たちの試験では、この速度の差が試験進行の妨げとなりました。速度の遅い装置が測定を終えるのを待たなければならなかったからです。

精度を犠牲にしてでもお金を節約したいという誘惑に駆られる人が多くいます。しかし、製品の安全性を確認するための装置であれば、初期投資を怠ると最終的にそのツケを払うことになりかねません。製品の安全性に自信が持てないために製品を過剰に包装したり乾燥させたりして、本来得られる可能性のある利益を失ってしまいます。また、出荷停止による廃棄損、リコール、顧客からの苦情などで利益が減少するかもしれません。いずれの場合でも、精度の低いセンサーはしばしば、精度の高いセンサーの導入金額をはるかに超えた多額の出費を伴う結果をもたらす恐れがあることを考慮しなければなりません。

測定時間

私たちは、各センサータイプの装置で、メーカーが取扱説明書で指定している手順に従い、18種類のサンプルをそれぞれ3回ずつ測定しました。試験で使用した装置は、工場で校正された新しい製品で、メーカーが指定した方法で試験用に準備しました。

全ての測定は、サンプル温度を25℃に制御して実施しました。温度平衡トレイを使用し、サンプルがあらかじめ25℃になるように準備しました。測定は、平衡に達するまで待たずに測定を開始する「推定モード」や「クイックモード」ではなく、平衡状態に達してから測定を開始する「平衡モード」のみで実施したため、全ての測定値は信頼に足る真の水分活性値と言えます。

試験の結果、チルドミラーセンサーとレーザーセンサーは、平衡モード(完全平衡化)で測定を行った場合、平均して、電気抵抗センサーや静電容量センサーの1/10程度の時間で測定できることが確認されました。

サンプル種類 チルドミラー露点センサー 波長可変半導体
レーザーセンサー
電気抵抗センサー 静電容量センサー
ポテトチップス 3.43 3.00 19.80 150.92
粉ミルク 3.18 3.00 14.38 63.42
ピーナッツバター 4.38 3.00 25.00 30.92
犬用カリカリ餌 2.62 3.00 10.00 14.42
ドライクランベリー 2.45 4.50 10.00 82.42
蜂蜜 2.72 4.50 12.13 78.42
ビーフジャーキー 2.42 7.50 11.08 41.92
チョコレートシロップ 3.08 3.00 74.13 23.42
ぶどうゼリー 2.55 3.00 60.80 10.92
ピュアメープルシロップ 2.15 7.50 69.47 18.92
パルメザンチーズ 2.42 3.00 17.47 13.42
ケチャップ 2.28 3.00 11.57 44.42
グルテンフリーパニーニブレッド 2.03 7.50 63.87 26.92
カントリーポテトブレッド 1.88 11.00 86.40 27.42
無塩バター 6.72 10.00 109.20 62.42
クリームチーズ 2.03 15.50 74.27 20.42
ポテトニョッキ 2.12 16.50 78.13 40.42
カボチャ缶詰 2.20 12.00 74.67 61.42

速度が遅いセンサーに起因する損失

  • 測定件数を増やしたい場合、より多くの装置の購入が必要になる可能性がある。
  • 測定時間が長いとQAテストに時間がかかり、生産が滞る可能性がある。
  • 次の工程への移行が妨げられ、製品が無駄になる可能性がある。
  • 測定に時間がかかるとラボの効率が低下し、スタッフ配置の手間が増える。
  • 測定に時間がかかると出荷が遅れる可能性がある。

精度

文献(Greenspan, 1979)で明確に定義された水分活性値を持つ15種類の標準塩を測定しました。標準塩のうち6つは不飽和塩で、9つは飽和塩を使用しました。各装置で、メーカーが取扱説明書で指定した手順で3回測定しました。使用した測定装置は工場で校正された新品のもので、メーカーが指定した方法で試験用に準備したものです。

全ての測定は、サンプル温度を25℃に制御して実施。温度平衡トレイを使用し、サンプルがあらかじめ25℃になるように準備しました。測定は、平衡に達するまで待たずに測定を開始する「推定モード」や「クイックモード」ではなく、平衡状態に達してから測定を開始する「平衡モード」のみで実施したため、全ての測定値は信頼に足る真の水分活性値と言えます。

センサーは、各センサーの平均精度、精度範囲、精度分布を考慮して等級分けされました。各センサーの各標準塩に対する精度の詳細は、要約の後に記載されています。

チルドミラー露点センサーの精度スコアは98/100(非常に良い)

平均精度 ±0.001 aw
精度範囲 ±0.000~±0.005 aw
±0.01 awを超える誤差が生じた標準塩はなかった(0/15)

波長可変半導体レーザーセンサーの精度スコアは92/100(非常に良い)

平均精度 ±0.002 aw
精度範囲 ±0.000~±0.009 aw
±0.01 awを超える誤差が生じた標準塩はなかった(0/15)

電気抵抗センサーの精度スコアは78/100(許容できる)

平均精度 ±0.005 aw
精度範囲 ±0.001~±0.020 aw
3種類の標準塩で±0.01 awを超える誤差が生じた(3/15)

静電容量センサーの精度スコアは64/100(サンプルによっては許容範囲外)

平均精度 ±0.007 aw
精度範囲 ±0~±0.022 aw
5種類の標準塩で±0.01 awを超える誤差が生じた(5/15)

各標準塩に対する精度

水分活性標準物 チルドミラー露点センサー 波長可変半導体レーザーセンサー 電気抵抗センサー 静電容量センサー
Sat LiCl - 0.113 0.001 0.005 0.001 0.006
17.8 mol/kg LiCl - 0.150 0.001 0.003 0.002 0.007
13.41 mol/kg LiCl - 0.250 0.000 0.003 0.001 0.009
Sat MgCl2 - 0.328 0.001 0.005 0.001 0.009
8.57 mol/kg LiCl - 0.500 0.001 0.004 0.007 0.008
Sat Mg(NO3)2 - 0.529 0.001 0.004 0.001 0.014
Sat NaBr - 0.576 0.003 0.006 0.000 0.015
Sat NaCl - 0.753 0.004 0.000 0.002 0.000
6.00 mol/kg NaCl - 0.760 0.000 0.005 0.005 0.000
Sat KCl - 0.843 0.003 0.003 0.003 0.003
2.33 mol/kg NaCl - 0.920 0.001 0.005 0.004 0.002
Sat KNO3 - 0.936 0.005 0.003 0.010 0.007
0.50 mol/kg KCl - 0.984 0.001 0.002 0.018 0.015
Steam Distilled Water - 1.00 0.000 0.002 0.020 0.022

不正確なセンサーに起因する損失

  • 精度が低いと不良品を出荷してしまう可能性がある(不合格のはずの製品が合格と判定される)。
  • 精度が低いと不必要なリワークが発生する可能性がある。
  • 速度が遅く精度の低い測定は、継続的改善や工程管理を意図した水分活性の利用を制限したり妨げたりする。

「クイック測定モード」の問題点

私たちは、電気抵抗センサーと静電容量センサーのクイック測定モードについて、同一のサンプルを同一の装置で、クイックモードと完全平衡モードの両方で、全く同じ条件で測定し、評価した。そして、クイック測定モードの水分活性値と完全平衡モードの水分活性値の差を評価した。

私たちのテストで明らかになったのは、「クイック」モードは、電気抵抗センサーと静電容量センサーの両方で、予測値と実際の測定値の間に許容できないばらつきがあることです。水分活性値が非常に高いサンプル、あるいは非常に低いサンプルの場合、これらの問題はさらに深刻になりました。

電気抵抗センサーのクイックモードは、有意に高速というわけではないものの(平衡モードで25~60分以上、クイックモードで8~30分)、平衡モードとクイックモードによる測定値の間には有意な差が見られました。

私たちがテストした新品の電気抵抗センサーは、予測値(クイックモード)と実測値(平衡モード)の間に、0.001から0.121(平均0.024)の差があり、12の測定値のうちの7つが許容限界±0.01awを超えました。全てのケースで、クイックモードは平衡モードと比べて低すぎる値を示しました。

静電容量センサーでは、クイックモード(~5分)による時間短縮は大きかったものの(30~60分)、精度の面では大きなばらつきが生じました。

新品の静電容量センサーは、予測値(クイックモード)と実測値(平衡モード)の間に、0.002から0.061(平均0.023)の差があり、12の測定値のうちの9つが許容限界±0.01awを超える結果となりました。静電容量センサーの予測値が実測値より高いこともあれば低いこともあったため、静電容量センサーは予測可能性がやや低いと判断しました。

クイックモードの予測値と平衡モードの測定値との間に大きな差がある理由は、予測の仕組みがサンプルの特性を一切考慮していないからと考えられます。全てのサンプルには固有の蒸気平衡化速度があります。クイックモードで水分活性を正確に予測するには、この速度を考慮することが不可欠です。しかし、クイックモードは、全てのサンプルタイプに対して同じ予測の仕組みが適用されています。

*AQUALABは、±0.02awまたはそれ以上の精度を持つ、製品固有の平衡化速度を考慮に入れた60秒測定のオプションも提供しています。

クイックモードと完全平衡化モードによる測定値の相違

ポテトチップス 粉ミルク ピーナッツバター 犬用カリカリ餌 ドライクランベリー 蜂蜜 ビーフジャーキー ぶどうゼリー パルメザンチーズ ケチャップ グルテンフリーパニーニブレッド ポテトニョッキ
電気抵抗センサー 0.019 0.036 0.040 0.121 0.015 0.005 0.020 0.006 0.001 0.005 0.016 0.004
静電容量センサー 0.061 0.052 0.028 0.010 0.006 0.002 0.013 0.021 0.019 0.028 0.013 0.020

*注 : チルドミラーセンサーとレーザーセンサーは、常に完全に平衡に達してから水分活性を直接測定するため、クイックモードはありません。

測定チャンバーの汚れ

食品を検査する過程で、時として食品や油脂・粘着性物質で装置が汚れてしまうことがあります。ところが、ユーザーに対して装置を頻繁にクリーニングするように推奨しているメーカーが少ないのが現実です。

ところで、センサーは汚れによってどのような影響を受けるのでしょうか。これを検査するため、各センサーのサンプルチャンバーを、粉砕した乾燥ドッグフード、粉ミルク、ベーコンの脂、マシュマロペーストで汚してから、標準塩の水分活性を測定しました。

最も成績が良かったのはチルドミラーセンサーでした。チャンバーの汚れにより、チルドミラーの精度スコアはA(98)からB+(88)になりました。新品の電気抵抗センサーは10点下がってC+からD+になりました。その他のセンサーは汚れによる影響をより大きく受け、静電容量センサーはDからFに16点下がり、レーザーセンサーはB+からFになんと28点も下がりました。

チャンバーの汚れにより、電気抵抗と静電容量の両センサーのクイックモードはさらに悪化しました。B社のセンサーの精度は40点低下し、ぎりぎり合格点の60点から許容範囲外の20点になりました。A社の電気抵抗センサーはB社の静電容量センサーよりも成績が良かったものの、チャンバーが汚れた状態でのクイックモードの性能は16点下がり、D-(63)に終わりました。

センサーヒステリシス
水分活性が高いサンプルを測ったあとに、水分活性が低いサンプルを測ると何が起こるのか?

センサーのヒステリシスとは、センサーが直近に測定したサンプルの水分を保持したまま、つまり、センサーから水分が抜けきっていない状態で次の測定をすると生じる問題です。特に、水分活性の高いサンプルを測定したあとに、十分な時間を空けることなく水分活性の低いサンプルを測定すると、ヒステリシスが生じます。結果、本来の値よりも高めの水分活性値が示されます。センサーがスポンジのように機能し、水分を吸収する特性を持つ電気抵抗センサーや静電容量センサーでは特に問題となります。

私たちは各センサータイプのヒステリシスを検査しました。設定はシンプルで、各装置を平衡測定モードに設定しました。最初に、水分活性の低いサンプルの基準値を得るために、小麦粉の水分活性を測定しました。どのセンサーも0.33 awに近い値を示し、静電容量センサーは0.32 awとわずかに低い値を示しました。センサー間で値がほぼ一致していたため、0.33awを小麦粉の真の水分活性値としました。次に、水分活性の高いサンプルとして、0.92 awに調整された標準液を測定しました。そして、標準液の測定後すぐに、小麦粉のサンプルを再び測定しました。

チルドミラーセンサーとレーザーセンサーは、0.92aw標準液の測定前後で小麦粉の測定値に変化はなく、センサーのヒステリシスはまったく見られませんでした。しかし、電気抵抗センサーと静電容量センサーは、いずれも大きなセンサーヒステリシスを示しました。電気抵抗センサーは基準値よりも0.046aw高い値を示し、静電容量センサーは0.020aw高い値を示しました。

注目すべきもう一つの重要な点は、小麦粉の再測定に要した時間です。チルドミラーセンサーとレーザーセンサーは3分以内に測定を終えました。電気抵抗センサーは50分以上かかり、それでも小麦粉の本来の水分活性値を読み取ることはできませんでした。静電容量センサーは17分で測定を完了しましたが、電気抵抗センサーと同様に、本来の水分活性値を読み取ることはできませんでした。

センサータイプ 小麦粉のaw(Before) 標準塩0.92 aw 小麦粉のaw(After) センサーヒステリシス 小麦粉 (After)
測定時間 (分)
チルドミラー露点センサー 0.330 0.922 0.331 0.001 2.530
波長可変半導体レーザーセンサー 0.330 0.916 0.330 0.000 3.000
電気抵抗センサー 0.328 0.928 0.374 0.046 50.960
静電容量センサー 0.322 0.929 0.342 0.020 17.000

総括

チルドミラー露点センサー

長所:
卓越した精度と分解能であらゆる範囲の水分活性を測定することができます。測定時間は3分を下回り、競合製品の半分あるいは1/10の時間で測定することができます。センサーを清潔に保つ必要がありますが、汚れたチャンバーの検査で最も成績が良かったのはチルドミラーセンサーでした。古いセンサーでも新品のセンサーと同様の性能を維持することができます。
短所:
測定することが難しい揮発性成分があります(アルコール、プロピレングリコールなど)。詳細はガイドラインをご覧ください。
結論:
チルドミラーセンサーは、入手可能な水分活性計の中で最高精度(±0.003aw)を誇るだけでなく、常に完全平衡化の直接測定であるにもかかわらず、測定はわずか3~5分で完了します。また、耐久性に優れ、高寿命で、汚れていても信頼できる性能を発揮することができます。
仕組み:
露点とは、一定の圧力下においてサンプルの湿った空気が飽和水蒸気量に達する温度です。この飽和温度においてさらに冷却を進めると水蒸気の凝結(結露)が生じます。チルドミラー露点方式はチルドミラー(冷却される鏡)と光電子メカニズムを用いて鏡面に発生した結露を検知します。チルドミラーの温度は蒸発と凝結との動的平衡を維持するために電子フィードバックにより制御されますので、露点温度を厳密に測定することができます。

波長可変半導体レーザーセンサー

長所:
アルコールや有機溶剤、プロピレングリコールを含むあらゆるサンプルを測定することができます。チルドミラーセンサーには劣りますが、精度と速度の両面で非常に優れています。経時劣化による性能の低下に強いセンサーです。
短所:
チルドミラーセンサーよりも若干精度や速度が落ちます。チャンバーが汚れていると測定に大きく影響します。
結論:
揮発性成分を含むサンプルを測定するのであればこのセンサーです。清潔に保つことができる環境で測定を実施する必要があります。
仕組み:
このセンサーはきめ細かく調整された赤外線レーザー光線をサンプルの上部空間を横切るように照射します。レーザー光線は1ナノメートルよりも小さな波長で、一般的に発生する水の同位元素に特異的に反応します。アルコールやガソリン、有機溶剤、プロピレングリコールなどの蒸気分子が測定に影響を及ぼすことはありません。レーザー受容器は光線の減衰を測定し、この測定値から空気中の水分子の濃度を特定します。このレーザーセンサーは揮発性成分の濃度が高いサンプルの水分活性を正確に測定することができる唯一のセンサーです。

電気抵抗センサー

長所:
平衡化測定モードは信頼できる精度 (C+)です。
短所:
「クイックモード」であっても測定に長い時間がかかります。チャンバーが汚れていると0.7awを上回るサンプルの測定精度が許容範囲を超えてしまいます。時間とともにセンサーが劣化します。揮発性成分を含む大部分のサンプルの測定には不向き、あるいは役に立ちません。安価なモデルは精度や性能が劣ります。
結論:
電気抵抗センサーは信頼できる方式であり、歴史が長いため、優良企業により支持されてきました。しかし、速度と精度の面で最も性能が高いチルドミラーセンサーと競り合うことはできません。また、揮発性成分を測定する性能についても誇張されているように見受けられます。
仕組み:
極めて上質な2本のガラス棒の両端がガラス玉により結合されています。 金属の電極がガラス棒の間に挟み込まれ、ガラス棒の間の溝には電解液が保持されています。このセンサーが水蒸気を吸収するにつれてイオン性官能基が解離し、電気抵抗に変化が生じます。この電気抵抗の変化を相対湿度の変化と相関します。

静電容量センサー

長所:
安価です。チルドミラーセンサーや電気抵抗センサーよりも揮発性成分による影響を受けにくいです。
短所:
測定に時間がかかります。他のセンサーと比べて著しく精度が落ちます。時間とともにセンサーが劣化します。 大部分の揮発性成分の測定には不向きまたは実用性がありません。チャンバーの汚れによる影響を強く受けます。「クイックモード」における精度と分解能は容認できないほど低く、特にチャンバーが汚れている場合はなおさらです。
結論:
静電容量センサーは予算に優しい選択のように思えますが、時間とともに出費がかさみます。平衡化測定モードは測定に長い時間がかかるだけでなく十分な精度を持たないため、待つことを厭わないとしても実用性が限定されます。「クイックモード」の精度は許容範囲を超えいて、チャンバーが汚れているときは特に悪化しますので、本格的な測定には不向きな選択と言えるでしょう。
仕組み:
静電容量センサーは吸湿性のある誘電性の素材を一対の電極で挟み込み、小さなコンデンサー(蓄電器)を形成します。ほとんどの静電容量センサーは単にコンデンサーであり、2つの電極が誘電性のある素材(通常はプラスチックやポリマー)を挟み込んでいます。ポリマーやプラスチックの比誘電率は通常一桁台の数字で、水蒸気の比誘電率である80よりもはるかに小さい値です。水蒸気が誘電性の素材に吸収されるにつれてセンサーの静電容量は増加します。この静電容量の変化を相対湿度の変化に相関させることにより、静電容量の測定結果から相対湿度(水分活性)を計算することができます。

電気抵抗センサー以外は法律違反なの?「公定法」の真実

電気抵抗センサーを製造、販売する一部のメーカーのマーケティングキャンペーンにより、電気抵抗センサー搭載の水分活性計のみが、いわゆる「公定法」に準拠しているとの主張がなされているようです。これにより、他のセンサータイプの水分活性計を使用すると法律違反になるとの誤解が生じており、実際に弊社では、AQUQLAB水分活性計の購入を検討されているお客様から問い合わせを受けることがあります。

結論から言えば、答えは、「公定法」は食肉加工品の輸出入のための検疫所への提出書類に限定したものであり、日常の製造や品質管理について規制するものではないということです。この点を誤解しないようにしたいです。

まずは、「公定法」について整理してみましょう。ここで言う「公定法」とは、食品衛生法衛乳通達54号(平成5年、1993年)、および2015年(平成27年)の通達を指していると思われます。

この通達を要約すると、「食肉加工品を輸出入するときに、検疫所に提出する書類には、電気抵抗式機器で測定した水分活性値を記載すること」と記載されています。食肉加工品とは、乾燥食肉製品(ジャーキーなど)、非加熱食肉製品(生ハムなど)、特定加熱食肉製品(ローストビーフなど)、加熱食肉製品(ハム、ソーセージなど)を指します。

つまり、上記の通達(公定法)は、食肉加工製品の輸出入検定証明用の検査に限った法律であり、日常の製造、品質管理については、食肉加工製品を含めて電気抵抗センサー以外のセンサーを規制する法律は存在しません。したがって、チルドミラーやレーザー、静電容量などの他の測定方法でも何ら問題ありません。

製造や品質管理の現場では、日常の品質管理で多検体を正確に、迅速に測定でき、メンテナンスコストが低く、長期にわたり使用できる耐久性の高い測定装置のニーズが高まっています。

本ガイドに記載されている各センサータイプ別の試験結果が示す通り、電気抵抗センサーが他のセンサータイプよりも優れた性能を持つとは言えず、また、その科学的根拠も示されておらず、弊社でもその科学的根拠を見つけることができませんでした。

実際、食品の安全性や品質管理の先進国である米国では、Top100の食品会社の90社以上がAQUALABのチルドミラーやレーザーのいずれか、または両方の装置を使用しています。

また、医薬品の製造や品質管理に関する基準や規定にあたる薬局方には、水分活性の一般試験法「3.05収着-脱着等温線測定法及び水分活性測定法」の中で、湿度を測定するセンサーの例として、チルドミラーセンサーが紹介されています。

「理論上はあらゆるタイプの湿度計を用いることができるが,分析を目的とする場合には,小型で堅牢であることが前提条件となる.AWの測定は露点/冷却鏡法1) を用いて行うことができる.磨き上げて冷却した鏡を凝結面として用いる.冷却系は凝結鏡から反射された光が入る光電子セルと電子回路的に繋がっている.試験試料と平衡にある空気流束を鏡にあてながら,凝結が起こるまで鏡を冷却する.凝結が始まるときの温度が露点であり,これからERHが決定される.
1) AOAC International Official Method 978.18.」

日本薬局方 一般試験法 3.05 収着-脱着等温線測定法及び水分活性測定法 より抜粋