水分活性入門。食品製造における水分活性の役割
水分活性(aw)は、エネルギーの指標です。食品自体には蒸気圧というエネルギーがありますが、それが周囲の空気層と平衡状態にあるときの比率を数値化したものです。この測定数値は欠かすことのできないもので、食品の微生物感受性に直接関係し、食品の保存期間の決め手となる多くの反応と相関関係にあります。
水は安価な食材ですが、微生物の生育、カビの発生、食感の低下、固結、腐敗、ビタミンの損失など、金銭的損失を伴う多くの問題を引き起こすします。この「水」について、つまり、製品に含まれる水分について理解する最良の方法は、水分活性の測定方法を学ぶことです。
水分活性とは何か?
水分活性とは、エネルギーの状態を数値化したものです。水分活性で用いられるawとは、食品自体の蒸気圧(つまり水分の持つエネルギー)が、周囲の空気媒体と平衡状態を保っているときの比率のことです。
コップ一杯の水と乾いたスポンジを用意します。スポンジの角をコップの水につけます。水はコップからスポンジに移動します。
水分活性とは、水をスポンジの中に移動させる力です。では、スポンジの中の水とコップの中の水がどう違うかを考えてみましょう。
まず気づくのは、コップの中の水は自由に動き回れますが、スポンジの中の水は自由ではないということです。水素結合、毛細管力、ファンデルワールス-ロンドン力によって結合しているからです。これをマトリックス効果と呼びます。つまり、スポンジの水はコップの中の水よりもエネルギーが低い状態にあると言えます。したがって、より高いエネルギー状態にあるコップの中の水はスポンジの中に流れ込みます。それを戻すには、スポンジを絞るという作業(エネルギー)が必要となります。
また、スポンジの中の水はコップの中の水よりも蒸気圧と凝固点が低く、逆に沸点は高いです。測定や定量化という点からも、スポンジの中の水とコップの中の水は違います。
水のエネルギーは、溶質で希釈することによっても減少させることができます。これは浸透圧効果と呼ばれるものです。水を純粋で自由な状態に戻すためにはエネルギーが必要なので、これも水分活性を低下させます。この浸透圧効果と前に述べたマトリックス効果の和が、エネルギー変化の総和となります。
計算により水のawを測定する
試料を密閉容器に入れると、やがて、ヘッドスペース(試料上部の空気層)の空気の相対湿度が試料の水分活性と平衡になります。平衡状態では試料とヘッドスペースは同等の状態となりますから、ヘッドスペースの相対湿度を測定することで試料の水分活性を知ることができます。これが、水分活性はどのように測定するのかという問いへの最も信頼できる答えと言えましょう。
二次的方法:湿度計、静電容量センサー
最近の測定装置の多くは電気容量式または抵抗式の湿度計センサーを使用して試料上部のヘッドスペースの湿度を測定しています。これは初期の水分活性計に倣ったものです。
これらの測定装置は、電気信号と相対湿度を関連付けるという二次的な方法を採用しており、既知の標準塩を使用して校正する必要があります。
これらのセンサーでは、試料とセンサーの温度が同じである限り、平衡相対湿度は試料の水分活性と等しくなります。正確な測定には厳密な温度制御と温度測定が必要です。静電容量センサーはシンプルな設計で、比較的安価な水分活性計によく使用されています。
水分活性の測定方法 - チルドミラー露点式は一次的測定方法
水分活性(aw)の最も優れた測定方法は、p/p0比率いた一次的測定法です。
p0(飽和蒸気圧)は試料の温度のみに依存するため(添付のグラフの通り)、試料の温度を測定することで測定可能です。 試料中の水の蒸気圧は、密閉された空間に置かれた試料の上のヘッドスペースの蒸気圧を測定することで測定できます。その蒸気圧を最も正確に測定する方法は、第一原理に戻りますが、空気の露点を測定する方法です。
一次的測定法とは、直接測定することであり、校正は不要
露点法(またはチルドミラー露点法)の大きな利点は、測定速度が速く精度が高いことです。チルドミラー露点センサーは、基本的な熱力学の原理に基づいた一次的測定法です。チルドミラー露点式水分活性測定装置は、通常5分以内に高精度(±0.003aw)の測定を行うことができます。水分活性の測定は測定温度に基づくため、校正(関連付け)は必要ありません。ユーザーは標準塩溶液を測定し、規格通りの測定精度が出ているかを定期的に確認するだけです。一次的測定方法である露点式は迅速な測定が可能なため、水分活性の測定によるベルトコンベアの速度や加熱時間、温度の調整が、製造ラインでできるようになります。