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研究者対象 土壌水分完全ガイド #1

土壌水分ー なぜ必要なのか、どのように測定するのか、測定方法の比較、何回測定するのか、どこで測定するのか、などなど。

環境測定に初めて取り組む大学院生、経験豊富な研究者、灌漑管理に悩む生産者、いずれにしても、土壌水分を測定する必要性を感じたことがあるのではないでしょうか。なぜかというと、水の利用可能性は生態系の生産性を左右する要因の一つであり、土壌水分(土壌水分量、土壌水分ポテンシャル)は、ほとんどの植物にとって直接的な水源となるからです。土壌水分とは何か。以下は、土壌水分測定と土壌水分に関する重要な科学的用語の説明です。

土壌水分が意味するものとは?

土壌水分とは、単に土壌中の水分量を知ることではありません。測定方法を決める前に知っておくべき基本原則があります。ここでは、実際に何を調べようとしているのかにポイントを当てた質問をいくつか紹介します。

  • 土に蓄えられた水に関心があるのか?
  • 生産量を最大化するための一次生産に利用できる水にこだわるのか、それともサイトでの最大生産量を把握するのか?
  • 土の中の水や溶質の動きを研究しているのか?
  • 作物の水利用の最適化を目指しているのか?
  • 土壌の水文学をモデル化しようとしているのか?

このように、土壌の水分というのは、どの質問に関心があるのかによってまったく異なる意味を持つことがあります。

どの変数を測定すべきかを知る

ほとんどの人は、土壌水分量という1つの変数だけで土壌水分を見ます。しかし、土壌中の水の状態を表すには、水の量である「含水量」と水のエネルギー状態である「水ポテンシャル」の2種類の変数が必要です。

土壌水分量は広範な変数であり、大きさや状況によって変化します。土壌水分量は、単位体積または質量あたりの水の量と定義されます。基本的には、そこにどれだけの水があるかということです。

一方で、水ポテンシャルは、物質やエネルギーの強さや質を表す「示強的」な変数です。温度と比較されることが多いです。水ポテンシャルは、ゼロポテンシャルの純水を基準として、水量1モル(単位質量、体積、重量)あたりの位置エネルギーです。水ポテンシャルは、土から少量の水を取り出して、純粋な自由水のプールに沈めるために必要な仕事として見ることができます。

「What is water potential」

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土壌水分量:それは単なる量

ここでは、土壌の水分量を測定する方法として、重量含水比と体積含水率の2種類を簡単に説明します。

重量含水比とは、土壌の質量あたりの水の質量(すなわち、土壌1グラムあたりの水のグラム数)です。 質量を測定することで土壌の水分量を直接測定できるため、土壌水分量の主要な測定方法となっています。畑の湿った土壌サンプルを計量し、オーブンで乾燥させた後、乾燥した土壌を計量することで算出されます。

式1
式1

したがって、重量含水比は、湿潤土壌質量から乾燥土壌質量を差し引いたものを乾燥土壌質量で割ったものに等しいです。言い換えれば、水の質量を土壌の質量で割ったものです。

体積含水率とは、土壌の総体積あたりの水の体積のことです。

式2
式2

体積含水率は、体積で報告されることを除けば、重量含水比と同じものを表します。

図1
図1. 土壌の既知の体積に含まれる土壌成分。全成分の合計を100%とする。体積含水率(VWC )は、水の体積を土壌全体の体積で割ったものに等しいので、この土壌ではVWC は35%となる。

例えば、既知の体積の土壌の成分は図1に示す通りです。すべての成分の合計は100%です。体積含水率(VWC )は、水の体積を土壌の総体積で割ったものに等しいので、土壌の体積が100%であれば、体積含水率は100%になります。この場合、VWC は35%になります。VWC は、cm3 / cm3またはinch per footとして報告されることもあります。

重量法とVWC :かさ密度と連動

重量含水比(w )は、土壌の乾燥密度(ρb )を乗じることによって体積含水率(θ )に変換することができます(式3)。

式3
式3

重量含水比は、土壌中の水分量を測定する第一原理(または直接)方法であるため、原位置またはリモートで検出されるほぼすべてのVWC 測定値の校正と測定値の検証に使用されています。誘電率センサーを使用する場合は、電磁界での測定値と土壌水分量には関連性がありますから、体積含水率が正しいかどうか不安な場合は、土壌を採取し、重量含水比を測定し、かさ密度を測定して、ご自身で確認してみてください。

土壌水分入門講座

土壌水分とは、単に土壌中の水分量を知ることではありません。測定方法を決める前に知っておくべき基本的な原理があります。この20分間のウェビナーでは以下のことを学びます。

  • 土壌水分はなぜ量だけでないのか
  • 水分量:水分とは何か、どのように測定するか、そしてなぜ必要なのか
  • 水ポテンシャル:水ポテンシャルとは何か、水分量との違い、そしてなぜ必要なのか
  • 水分量、水ポテンシャル、またはその両方を測定する必要があるのか
  • 各パラメータを測定するセンサー

「SOIL MOISTURE 101」

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体積含水率の測り方

体積含水率の測定は、ほとんどの場合、何らかのセンサーを用いて行われます。METER Groupの土壌水分センサーは静電容量技術を使用しています。このセンサーは、水の「極性」を利用して計測を行います。どのように機能するのでしょうか?

図2
図2. 水分子

図2に水の分子を示します。上部に酸素原子1個の負極、下部に水素原子2個の正極があります。土の中に電磁場(図3)を導入すると、この水分子がさっと吸着します。もし、磁場を逆にすれば、逆に跳ねるでしょう。このように、土壌水分センサーで電磁場を作ることで、その電磁場に対する水の影響を測定することができるのです。土の中の水分が多ければ、大きな効果が期待できます。静電容量技術について詳しくはこちらです。

図3
図3. 静電容量式センサー

図3 静電容量式センサーは、2つのプローブ(プラスとマイナスの電荷を持つもの)を使って電磁場を形成する。これにより、プローブ間の物質(土壌)の電荷蓄積量を測定し、土壌中の水分量(VWC)に関連付けることができる。

なぜセンサーで土壌水分を測定するのか?

土壌水分センサーの使用は、時系列での測定を可能にします(図4)。これは、土壌で何が起こっているかを理解する強力なツールになります。重量含水比による水分測定では、1個または複数のサンプルを採取し、研究室に持ち帰る必要があります。これが時系列での測定となると、基本的に測定地での継続的なサンプリングが求めらます。これは非現実的なことです。

図4
図4. 土壌水分量と水ポテンシャルデータの時系列例

土壌水分センサーを使えば、土壌の水分量が変化するタイミングを自動的に測定するとともに、分布内の深さの比較も可能です。また、この曲線の形状から、土壌中の水分の状態について重要な情報を得ることができます。

表1 異なる土壌センシング方法の比較
重量含水比 VWCセンサー リモートセンシング (SMOS)
第一原理/直接法 時系列に便利 限られたスケールで時系列データを提供
時間がかかる 分布の経年変化のセンシングが可能 空間サンプリングに絶大な威力を発揮
破壊的 煩わしくない  
一度きり    

土壌センシング方法の比較

重量含水比は第一原理としては良い測定方法ですが、時間がかかり、破壊的で、ある時点の1度きりのデータしか得ることができません。土壌水分センサーは、時系列での測定が可能で、経時的な分布測定ができ、土壌にセンサーを挿入することで破壊的なサンプリングは避けられます。リモートセンシングは限られたスケールで時系列データを提供しますが、水分測定に重要な空間的サンプリングには非常に有効です。METER Groupの土壌水分センサーは、現場破壊を最小限に抑えるように設計された専用の設置ツールで、攪乱を軽減します(動画でその仕組みをご覧ください)。

「TEROS センサー掘削孔設置キット」

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土壌水分の観察:設置が重要な理由と正しい設置方法

正確な土壌水分データを得たいのであれば、センサーの正しい設置を第一に考える必要があります。土壌水分を測定する場合、かさ密度の自然な変動により2~3%の精度の損失が発生する可能性がありますが、設置方法が悪いと10%を超える精度の損失が発生する可能性があります。設置不良は土壌水分データにおける最も一般的なエラー原因ですが、毎回完璧な設置を保証するテクニックがあります。センサー設置のエキスパートであるChris Chambersが、なぜよりスマートな土壌水分センサーの設置が必要なのか、そしてそれをどう実現するかを説明します。

  • 優れた土壌水分データとはどのようなものか
  • 様々な設置上の問題がどのようにデータに現れるか(空気間隙、センサーの緩み、土質の変化、深さの交差など)
  • 正確な設置を行うには
  • 新しいTEROS掘削孔設置ツールは、一貫性を向上させながら、どのように空気間隙と現場の攪乱を減らすか
  • 正確な設置を保証するために他の科学者が行っていること

「Soil Moisture Sensor Installation」

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飽和:それはあなたが考えているものとは違います

体積含水率の定義では、乾燥炉で乾燥した土壌は0%VWC です。これは、この定義の一方の指標です。純水はもう一方の指標で、100%です。そこで多くの人は、100%VWC は完全に飽和した土壌であると考えますが、そうではありません。土壌の種類によって、飽和する水分量は異なるのです。

一つの見方として、%飽和度というものがあります。

%飽和度 = VWC / 間隙率 × 100

任意の土質の間隙率がわかっていれば、飽和時の含水率を概算することが可能です。しかし、土壌が現場で飽和状態になることはめったにありません。なぜでしょうか?

図5
図5. 土壌の断面図

図5では、土が水を吸着すると水膜ができ、土の粒子に付着しているのがわかると思います。また、空気に満たされた間隙も存在します。圃場の条件下では、この空隙がなくなることは難しいです。このように土は空気を含んでいるため、いかなる種類の土であっても、飽和度が理論上の最大飽和度と等しくなることはほとんどありません。

水ポテンシャルとは?

水ポテンシャルは、土壌の水分を説明するために使用されるもう1つの変数です。前述のように、土壌のエネルギー状態、またはポテンシャルがゼロの純水を基準とした水1 molあたりのポテンシャルエネルギーと定義されます。どういうことでしょうか?この原理を理解するために、土壌サンプルに含まれる水を飲料用グラスの中の水と比較してみましょう。コップの中の水は比較的自由で利用可能ですが、土壌中の水は表面に結合しており、溶質によって希釈され、さらに圧力がかかっていることもあります。その結果、土壌の水は「自由な」水とは異なるエネルギー状態を持っています。自由水は、エネルギーを使わずにアクセスすることができます。土壌水は、保持されているエネルギーと同等以上のエネルギーを消費して初めて取り出せます。水ポテンシャルは、その水を土壌試料から引き出すためにどれだけのエネルギーを消費する必要があるかを表しています。

水ポテンシャルは、重力ポテンシャル+マトリックポテンシャル+圧力ポテンシャル+浸透ポテンシャルの4つの要素の合計です(式4)。

式4
式4

マトリックポテンシャルは、土壌表面に付着している水に関連するため、土壌に関する限り最も重要な要素です。図6では、マトリックポテンシャルによって水膜が形成され、土の粒子に付着している状態を表しています。水が土壌から流出すると空気で満たされた間隙が大きくなることによりマトリックポテンシャルが低下し、水は土粒子とより強く結合するようになります。下の動画でマットリックポテンシャルの動きをご覧ください。

「Matric Potential in Action」

水ポテンシャル勾配は、土壌中の水の流れを促進する原動力です。そして、土壌の水ポテンシャルは、植物が利用できる水の最良の指標となります(その理由はこちら)。水分量と同様に、水ポテンシャルも研究室やフィールドの両方でセンサーを使って測定することができます。ここでは、様々なタイプの水ポテンシャルセンサーをご紹介します。

水ポテンシャルは水の動きを予測する

水は、図 6 に示すように、より高いエネルギーの場所からより低いエネルギーの場所へ、その場所が平衡に達するまで移動します。例えば、土壌の水ポテンシャルが-50 kPaであった場合、水は負の値がより大きい-100 kPaに向かって移動して安定した状態になります。

図6
図6. 水は常に高いエネルギー状態から低いエネルギー状態へと移動する。

これは、植物の土壌大気連続体において起こることとも近似しています。図7では、土壌は-0.3 MPaで、根はそれよりわずかにマイナスの-0.5 MPaです。これは、根が土壌から水を吸い上げることを意味します。そして、水は木部を通って上昇し、このポテンシャル差を越えて葉から排出されます。そして、このポテンシャル勾配を動かすのは、-100 MPaにある大気です。つまり、水ポテンシャルは、水が系の中でどの方向に動くかを決定しているのです。

図7
図7. あるシステムにおける水ポテンシャル勾配の例。土は-0.3 MPa、根は-0.5 MPaと負の値がやや大きくなっている。これは、根が土壌から水を吸い上げることを意味する。そして、その水は木部を通って上昇し、葉から排出される。そして、この勾配を動かしているのが、-100 MPaの大気である。

植物が利用できる水とは?

植物が利用できる水とは、土壌や培地における圃場容水量と永久しおれ点の間の水分量の差です(以下の定義参照)。土壌が永久しおれ点付近まで乾燥すると、ほとんどの作物は大幅な収量減に見舞われます。作物の収量を最大化するためには、土壌の水分量を永久しおれ点よりもかなり高い状態に維持するのが一般的です。植物有効水分量は、土壌中の水貯蔵量の大きさを示すものであり、依然として有用な概念です。土壌の種類に関する基本的な知識があれば、原位置土壌水分センサーによる測定値から圃場容水量と永久しおれ点を推定することができます。これらのセンサーは連続的な土壌水分データを提供し、作物収量と水利用効率を高めるための灌漑管理決定を導くことができます。

圃場容水量とは?

圃場容水量とは、「水で濡らしてから2~3日後、自由排水が無視できる程度に土壌中に残っている質量または体積ベースの水の含有量(土壌学用語集。アメリカ土壌学会, 1997)」と定義されています。細粒土では-33 kPa、砂質土では-10 kPaの水ポテンシャルにおける含水量とされることが多いですが、これはあくまでおおざっぱな出発点に過ぎません。実際の圃場容水量は、土質の特徴に依存します。圃場で測定された含水量データから決定する必要があります。もし、圃場容水量のデータを見るのであれば、そのポイントがどのように導かれたかを知っておくとよいでしょう。

一般に、圃場容水量は水ポテンシャルの観点から特定されることが多いですが、実際には流動特性であることを認識することが大切です。水は、重力ポテンシャル勾配の影響を受けて、土壌プロファイル内を下降していきます。しかし、土壌が乾燥すると透水係数が急速に低下し、最終的には蒸発や蒸散の損失と比較して下降流は小さくなります。土壌を水漏れのあるバケツのようなものだと考えてみてください。植物は、水が根を伝って下へ流れていくときに、その一部を捉えようとします。

永久しおれ点とは?

その対極にあるのが永久しおれ点です。永久しおれ点はヒマワリで実験的に決定され、-15 bar (-1500 kPa, Briggs and Shantz, 1912, p. 9)と定義されています。ヒマワリがしおれ、一晩で回復しない土壌ポテンシャルです。理論的には、植物が完全にしおれた状態で、膨張圧が失われた空のタンクです。しかし、-1500 kPaは必ずしもすべての植物のしおれ点ではありません。植物によっては、-1500 kPaよりもずっと早く、あるいはかなり後になってから、永久的なダメージから身を守ろうとし始めるものもあります。-1500 kPaは土壌の基準点として有用ですが、サボテンにとっておそらく-1500 kPaは気にならないでしょうし、ポンデローサ松がその時点でしおれることは決してありませんのでご注意ください。つまり、植物や作物によって意味が違ってくるのです(詳しくはこちら。M.B. Kirkham. Principles of Soil and Plant Water Relations, 2005, Elsevier)。

METER GroupのWP4Cを使えば、どんな土壌の永久しおれ点も素早く簡単に測定することができます。

土壌の種類:それを通してあなたが見るレンズ

水分の含有量について意味のある結論を出すには、土壌の種類について知っておく必要があります。

図8
図8. 土性三角図

図8は、砂から粘土までの最も一般的な土性の分類を示した図です。すべての土性は異なる粒度分布を持っています。表2は、-1500 kPa(永久しおれ点)において、各土性が異なる含水率を持つことを示しています。そして、それは圃場容水量でも同じです。

表2 異なる土性における代表的な圃場容水量と永久しおれ点
土性 FC(v%) PWP(v%)
5 1
壌質砂土 10 2
砂壌土 17 6
砂質埴壌土 32 19
壌土 27 14
砂質埴土 38 28
微砂質壌土 27 13
シルト 24 10
埴壌土 36 23
微砂質埴壌土 36 22
微砂質埴土 40 28
粘土 42 32

興味深いことに、砂質埴壌土の場合、圃場容水量で32%のVWC(十分に水分がある土壌)を保持することができますが、粘土の場合、32%のVWC は永久しおれ点にあたります。つまり、センサーを設置する際には土壌サンプルを採取し、土性と、土壌で起きていることを確実に把握する必要があるのです。これは、土壌の種類に変化がある場合に特に重要です。土壌の分布の変化やサイトごとの空間的なばらつきのいずれかが存在するからです。これに対して、水ポテンシャルは状況によって変化しません。これらの土性すべてにおいて、粘土であろうと砂であろうと、-33 kPaは-33 kPaです。微砂質壌土を中性土の一種としてみると、その-33 kPaの含水率は27%、-1500 kPaの含水率は13%です。一般的なかさ密度の場合、全空隙は50%程度です。これが水で満たされると、土は飽和状態になります。そこで、飽和状態から、(圃場容積を-33 kPaとすると)半分の水が排出すると圃場容水量に達します。残った水の約半分は植物が利用できる水です。植物が取り出せる水をすべて取り出した後、植物が取り出せない水とほぼ同じ量の水が土壌中に残っています。

PARIOは、あらゆる土壌の土質と粒度分布を自動的に判定する装置です。

土壌水分保持曲線

水ポテンシャルと体積含水率の関係は、土壌水分保持曲線(水分放出曲線または土壌水分特性曲線と呼ばれることもある)で示すことができます。図9は、3種類の土壌の水分保持曲線の例を示しています。X軸は対数スケールでの水ポテンシャル、Y軸は体積含水率です。土壌の水分保持曲線は、物理的な指紋のようなもので、各土壌に固有のものです。これは、水ポテンシャルと土壌水分量の関係が土壌ごとに異なるためです。この関係を利用すれば、異なる土壌が曲線上のどの位置でどのような動きを示すかを知ることができます。例えば、水は土壌から速やかに排出されるのか、それとも根域で保持されるのか、といった重要な質問に答えることができます。土壌水分保持曲線は、植物の水分吸収、深層排水、流出などを予測するための強力なツールです。

図10
図9. 3種類の土壌の水分保持曲線。縦線は圃場容水量(左)と永久しおれ点(右)を示す。

HYPROPは、湿潤域の土壌水分保持曲線を自動作成する装置です。HYPROPとWP4Cを組み合わせることで、土壌水分の全領域の水分保持曲線を作成することができます。

土壌水分:必要なのは水分量か、それとも水ポテンシャルか?

土壌水分の測定に着手する前に、以下の項目を自分に問いかけてください。

  • 土壌にどれくらいの水が貯まっているのか知る必要があるのか?
  • 水がどの方向に移動するかを知る必要があるか?
  • 植物が水を得ることができるかどうかを知る必要があるか?
  • 植物のために、土の中にどれくらいの水があるのか知る必要があるか?
  • 水をやるタイミングを知る必要があるか?

土の中にどれだけの水が蓄えられているかを知るだけでよいのであれば、土壌水分量に注目するのがよいです。水がどこに移動するかを知りたいのであれば、水ポテンシャルが正しい測定方法です。植物が水を得ることができるかどうかを知るには、水ポテンシャルを測定する必要があります。

「explainer video 3- How to use soil water potential」

 

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水をやるタイミングや、植物のために土にどれだけの水が蓄えられているかを知りたいのであれば、おそらく含水量と水ポテンシャルの両方が必要でしょう。なぜなら、土の中に物理的にどれだけの水があるのかを知り、どの時点で植物が水を得られなくなるのかを知る必要があるからです。

参考文献:土壌水分とは何か?

Kirkham, Mary Beth. Principles of soil and plant water relations. Academic Press, 2014. 

Taylor, Sterling A., and Gaylen L. Ashcroft. Physical edaphology. The physics of irrigated and nonirrigated soils. 1972. 

Hillel, Daniel. Fundamentals of soil physics. Academic press, 2013. 

Dane, Jacob H., G. C. Topp, and Gaylon S. Campbell. Methods of soil analysis physical methods. No. 631.41 S63/4. 2002. 

あなたの目的に適した水分センサー方式はどれか?

土壌水分センサーについて調べていくと、何が違うのかわからなくなることがあります。そこで以下の2つのチャートを用意しました。最も一般的な土壌水分センシング方法、それぞれの長所と短所、そしてそれぞれの方法がどのような場面で役に立つかを比較しています。METERの土壌水分センサーはすべて高周波静電容量センシング技術を使用し、設置が簡単で可能な限り高い精度を保証するための設置用工具を使用しています。

表3. 土壌水分量センサーの種類
センサー 長所 短所 使用する場面
抵抗プローブ
  1. データロガーで連続測定が可能
  2. 低価格
  3. 低消費電力
  1. 精度が悪い:土壌の種類や土壌の塩分によって校正が変化する
  2. センサーの経年劣化
  1. 水分量が変化したかどうかだけ知りたい、精度を気にしない場合
TDRプローブ
(時間領域)
  1. データロガーで連続測定が可能
  2. 土壌別の校正で正確(2~3%)である
  3. 信号が消えるまで塩分の影響を受けにくい
  4. 査読者から評価されている
  1. 静電容量*に比べ、使い方が複雑
  2. 穴ではなく溝を掘る必要があるため、設置に時間がかかる
  3. 塩分濃度が高いと作動しない
  4. 消費電力が大きい(大型充電池を使用)
  1. 研究室がすでにシステムを所有している場合。静電容量よりも高価で複雑である。そして、TDRとキャパシタンスの両方が校正によって同等の精度を持つことが研究で示されている。
静電容量
センサー
  1. データロガーで連続測定が可能
  2. 設置が簡単なタイプもある
  3. 土壌別の校正で正確(2~3%)である
  4. 消費電力が少ない(小型バッテリー、ソーラーパネルがほとんどない)
  5. 安価なので、お金をかければより多くの測定値を得ることができる
  1. 高塩分(飽和抽出液8 dS/m以上)で精度が悪くなる**
  2. 低品質なブランドでは、精度や性能が劣るものがある
  1. 多くの測定箇所が必要
  2. 導入・維持が簡単なシステムが必要
  3. 低電力が必要
  4. 1ドルあたりの測定回数が多いこと
中性子プローブ
  1. 大きな測定容量
  2. 塩分に対して鈍感
  3. 最も長い歴史があるため、査読者から信頼を集めている。
  4. 土壌とセンサーの接触問題に影響されない
  1. 高価
  2. 操作に放射線証明書が必要 
  3. 非常に時間がかかる
  4. 連続測定ができない
  1. 認定を受けたプログラムに既に中性子プローブがあり、中性子プローブデータの解釈方法を既に知っていることが必要
  2. 塩分濃度が高い土壌や膨潤性粘土土壌を測定しており、接触状態を維持することが問題である場合
COSMOS
  1. 影響範囲が極めて大きい(800m)
  2. 自動化されている
  3. 広域の変動を平滑化するため、衛星データのグランドトゥルーシングに有効 
  4. 土壌センサーの接触問題に影響されない
  1. 最も高価
  2. 測定量の定義が不明確であり、土壌水分量により変化する。
  3. 植生などの交絡因子により精度が制限される場合がある。
  1. 広い範囲の水分量平均を求める場合
  2. 衛星データのグランドトゥルーシングを行う場合

*AcclimaとCampbell Scientificはオンボードの測定回路を持つTDRセンサー/プロファイルプローブを製造しています。これは、ほとんどのTDRシステムが直面する複雑さの課題を克服するものです。
**測定周波数に依存し、周波数が高くなるほど感度は低下します。

表4. センサーの利点の比較
  抵抗 TDR 静電容量 中性子プローブ COSMOS
価格 最も安価 中~高価格 低~中価格 高価格 最も高価格
正確度 低い 高い*(土壌別校正を行った場合) 高い*(土壌別校正を行った場合) 低い(フィールド校正で改善される) 不明
複雑さ 易しい 易しい~中級 易しい 難しい 難しい
消費電力 低い 中~高い 低い N/A 高い
塩類感度 とても強い
  1. 低~中程度の塩分濃度ではなし
  2. 高塩分濃度ではあり
高塩分濃度ではあり ない ない
耐久性 低い 高い 高い 高い 高い
影響範囲 プローブAとBの間の小さい領域 0.25~2L(プローブの長さ、電磁場の形状により異なる) 0.25~2L(プローブの長さ、電磁場の形状により異なる) 土壌が濡れているときは直径20cmの球体、土壌が乾いているときは直径40cmの球体 直径800m

*一部の低品質ブランドは、低精度・低性能を示します。TDR、静電容量センサーともに、精度を脅かす最大の要因は、設置不良による空隙の発生、次に土壌中の粘土活性(スメクタイト粘土など)、次に塩分であると言われています。

TEROSシリーズ 土壌水分センサー

METER Groupは、設置の不良、センサー間のばらつき、センサーの検証など、精度を高めるにあたって障壁となり得る要素を取り除くために、TEROS土壌水分センサーを開発しました。TEROS土壌水分センサーは、設置ツールによる一貫した完璧な設置、極めて堅牢な構造、センサー間のばらつきの少なさ、影響力の大きさ、高度なデータロギングを組み合わせ、最高の性能、精度、使いやすさ、信頼性を、お求めやすい価格で提供します。

もっと詳しく知りたいですか?以下のウェビナーでは、土壌水分の専門家であるLeo Riveraが、私たちが20年かけてTEROSセンサーシリーズを開発した理由を説明しています。

『2018-05-22 09.02 Revolutionizing Soil Moisture – A New Holistic Approach
for Higher Accuracy(1)』

 

フィールドセンサーをより高精度にする方法

より高い精度を得るには、土壌に特化した校正をご検討ください。METER Groupの土壌水分センサーは、水分量の強い関数である土壌の誘電率を測定することで、土壌の水分量を測定します。しかし、すべての土壌が同一の電気的特性を持つわけではありません。土壌の嵩密度、鉱物学、質感、塩類濃度のばらつきにより、現在のMETERセンサーの一般的な鉱物質校正では、ほとんどの鉱物質土壌で約±3~4%、土壌が含まれない成長培地(鉢植土、stone wool、ココナツ外皮繊維など)で約±5%の精度になります。しかし、土壌特有の校正を行うことで、土壌と無土壌培地に対して精度は+1~2%に向上します。METERは、土壌水分センサーのユーザーが、体積含水率測定で最高の精度を得るために、土壌固有の校正を実施してください。

表5. 土壌水分センサー比較表  
圃場条件が一般的に温暖で湿潤な場合は、TEROSなどの長寿命センサーを選択すること
  TEROS 12 TEROS 11 TEROS 10 EC-5 10 HS
測定項目 体積含水率,温度,
電気伝導度
体積含水率,温度 積含水率 積含水率 積含水率
測定範囲 1010 mL 1010 mL 430 mL 240 mL 1320 mL
測定値出力 デジタル SDI-12 デジタル SDI-12 アナログ アナログ アナログ
圃場寿命 10+年 10+年 10+年 3-5年 3-5年
耐久性 最も高い 最も高い 最も高い 普通 普通
設置 設置工具で高精度の測定 設置工具で高精度の測定 設置工具で高精度の測定 手で設置 手で設置

土壌水分センサーはいくつ必要ですか?

METER Groupは、設置の不良、センサー間のばらつき、センサーの検証など、精度を高めるにあたって障壁となり得る要素を取り除くために、TEROS土壌水分センサーを開発しました。TEROS土壌水分センサーは、設置ツールによる一貫した完璧な設置、極めて堅牢な構造、センサー間のばらつきの少なさ、影響力の大きさ、高度なデータロギングを組み合わせ、最高の性能、精度、使いやすさ、信頼性を、お求めやすい価格で提供します。

変動性を理解するのは難しい

調査地内では、土性、植生被覆の量と種類、地形、降水量などの気象要因、管理方法、土壌の水分特性(土壌中を水が移動する速さ)の違いから、土壌水分の変動が発生します。研究者は、土壌水分の多様性を把握するために必要なサンプル地点の数を把握するために、景観の特徴のばらつきを考慮する必要があります。

土壌水分は、降水、干ばつ、灌漑、蒸発散によって変化し、季節の天候や植生の多様性に関連した予測可能なパターンで、時間とともに変化する可能性があります(Wilson et al.、2004)。これは理解しやすい概念ですが、時間的・空間的ダイナミクスの相互作用から生じる変動性を考慮すると、より複雑になってきます。

土壌水分データはしばしば仮定を覆す

以下の例では、シミュレーションデータを用いて、土壌水分量に空間的・時間的差異が及ぼす影響を説明します。最初の例では、同じ調査地において、土壌水分量を湿潤条件と乾燥条件でシミュレーションし、確率密度関数(PDF)を算出しました。この例では、土壌水分PDFを記述するパラメータは静的なものではなく、土壌水分条件によって時間的に変化することを実証しています。

図10
図10. 乾燥状態(濃青)と湿潤状態(水色)の同一フィールドの土壌水分量の確率密度関数(PDF)

2つ目の例では、土壌水分が、湿潤でも乾燥でもない1つの時点についてシミュレーションされました。その結果、PDFは、調査地内の土壌水分量の「集団」が複数存在することを示しています(図11)。これは、いくつかの要因によって引き起こされる可能性があります。土性が異なる地域があること(例えば、より乾燥した砂地とより湿ったシルトロームの地域)、調査地域が低地の地形と隣接する丘陵斜面を含むこと、調査地域の植生カバーの種類が異なること、などが考えられます。

図11
図11. さまざまな景観を持つ場所でのPDF

上記の2つの単純な例は、時間と空間にわたる土壌水分の複雑な性質を示すものです。どちらの例も、フィールド条件下で土壌水分量を扱う場合、正規性の仮定が必ずしも有効ではないことを示唆しています(Brocca et al., 2007; Vereecken et al., 2014)。

土壌水分センサーの数は?それは場合によります

目的が調査地域の「真の」平均土壌水分量を決定することであるならば、サンプリングスキームは上記の変動源を考慮する必要があります。調査地に丘や谷があり、多様な種類の樹冠があり、降水量の季節変動がある場合、センサーは不均質性の主な原因を表す地域に配置する必要があります。そのかわりに、調査地がかなり均質であったり、研究者が土壌水分量の時間的パターンにしか興味がない場合(例えば、灌漑スケジューリングのため)、データの時間的自己相関のため、土壌水分センサーの数は少なくて済むかもしれません(Brocca et al.、2010;Loescher et al.、2014)。

原位置での連続測定は、土壌水分量の優れた理解をもたらします

土壌の水分量は時間的にも空間的にも非常に動的です。スポットサンプリングでこれらの動態をすべて把握するのは労力がかかり困難ですが、この方法を選択する研究者もいます。環境科学の他の多くの分野と同様に、土壌水分の挙動に関する最も深い洞察のいくつかは、原位置センサーのネットワークを使用した研究から生まれています(Bogena et al.、2010;Brocca et al.、2010)。ほとんどの用途において、原位置での連続測定は、土壌水分量に関する優れた理解をもたらします。

このトピックをより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

引用文献

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