土壌の透水係数の測定方法ーどの方法が適しているか?

透水係数とは何か、どのように測定するか、そして一般的な方法の長所と短所
透水係数:なぜ必要なのか
土壌の透水係数、すなわち土壌が水を透過する能力は、ほとんどすべての土壌の用途に影響を与えます。水収支を完全に把握するために不可欠であり、ベイドスゾーンを介した地下水の涵養を推定するためにも使用されます。水文学者はモデリングに透水係数の値を必要とし、研究者は土壌の健全性を判断したり、さまざまな現場での土壌中の水の流れを予測したりするために透水係数を使用します。農業分野では、透水係数に基づいて灌漑量を決定したり、侵食や栄養塩の溶出を予測したりします。また、埋立地の被覆の有効性を判断するためにも使用されます。地盤工学のエンジニアは、溜池、路盤、レインガーデンなど、流出水を捕捉するために設計されたあらゆるシステムの設計に、このデータを必要とします。また、土壌のない培地で植物が利用できる水量を把握するためにも使用されます。基本的に、土壌システム内での水の動きを予測する場合、水の流れを支配する透水係数を理解する必要があります。透水係数はどのように測定するのでしょうか?この記事では、透水係数の測定方法、透水係数とは何か、そして一般的に用いられている方法の長所と短所について説明します。
土壌の透水係数とは?
科学的な用語として、透水係数とは、多孔質媒体(例えば土壌)が飽和またはほぼ飽和の条件下で水を透過させる能力として定義されます。その意味を表すのが、式1です。iを水の流束(単位面積あたりの単位時間あたりの水の量)とすると、K(透水係数)に水頭勾配dh/dzを掛けたものになります。水頭勾配(または水ポテンシャル勾配)とは、土壌中で水を移動させる力です。Kは、その原動力と土壌中の水のフラックスとの間の比例係数です。

水頭(水ポテンシャル)は、大きく2つの要素に展開することができます。hmはマトリックヘッド(マトリックポテンシャル)、hgは重力ヘッド(重力ポテンシャル)です。つまり、水が土壌中を移動するためには、マトリック力と重力が存在します。

重力勾配dhg/dzは1に等しいです。当初、土壌に水を与えると、マトリック力によって水が急速に土壌に引き込まれます(下図2参照)。しかし、浸透が長く続き、土壌が非常に湿った状態になると、そのマトリックヘッドは0になります。

つまり、長時間になると浸透量は透水係数とほぼ等しくなるのです。これで、土壌の透水係数が何を意味するのかが感じられると思います。水を長時間かけておくと、水が土壌に浸透する速度は透水係数とほぼ等しくなります。
透水係数に影響を与える要因
透水係数は、土質、粒度分布、粗度、屈曲度、形状、導水孔の連通度などの要因に依存します。土質だけを考慮するのであれば、一般的に粗い土質の方が細かい土質よりも高い透水係数を示すでしょう。しかし、土壌の構造と細孔構造は、土壌の水透過能力に大きな影響を与えることがあります。
構造化された土壌には一般的に大きな孔があり、構造化されていない土壌には小さな孔があります。図1(下図)は、構造の良い粘土質土と構造の悪い粘土質土の違いを示しており、特に飽和状態またはその付近での透水係数に対する構造の重要性を示しています。
生物による孔、根管、あるいは動物の巣穴は、水を含んでいれば飽和透水係数を増加させます。これらの孔が地表に到達せずに水で満たされていない場合は、透水係数が低下する可能性があります。土壌の圧縮や密度も、土壌の含水量や水ポテンシャルと同様に、影響を与える要因の1つです。
透水係数曲線:重要な予測ツール
土壌は飽和または不飽和のいずれかであるため、土壌の透水係数は飽和透水係数(Ks/Kfs)または不飽和透水係数(K(Ψ))と指定されます。研究者は実験装置(KSATとHYPROP)を使って、特定の土壌の飽和/不飽和のレベルごとに透水係数の値をグラフ化した透水係数曲線を作成することができます。これらの曲線は、異なる水ポテンシャルにおける様々な土壌タイプでの水の流れを予測します。

図1に3種類の土壌の透水係数曲線を示します。縦軸は0ヘッド(水ポテンシャル)の場合です。右側の数値は飽和透水係数、左側の数値は不飽和透水係数です。左側は不飽和の値です。構造の悪い粘土質の土壌(下の線)は、砂質土壌よりも飽和透水係数がはるかに低いです。これは、粘土質の土壌が小さな孔から構成されており、流路がより制限されているためです。しかし、その粘土質の土(点線)が良い構造(つまり、団粒を含み、その団粒間に大きな孔があり、より良い流路が形成されている)であれば、その飽和透水係数は砂の透水係数より高くなる可能性があります。
図1の左側、ヘッド(水ポテンシャル)が負になると、土は飽和から脱水し始め、孔隙が空きます。孔隙(特に大きな孔隙)が空くと、透水係数は急激に低下します。つまり、不飽和透水係数は常に小さく、ほとんどの場合、土壌が飽和しているときよりも桁違いに小さくなります。
構造の悪い粘土質土と構造の良い粘土質土の不飽和透水係数は、やがて合流することに注目しましょう。これは、ある時点でマクロ孔が流れに寄与しなくなり、土粒子間のメソ細孔でのみ流れが発生するためです。また、構造のない砂質土の不飽和透水係数曲線は、最初は粘土質土より高いものの、土が乾燥するにつれて粘土質土より不飽和透水係数が低くなることに注意してください。
現場飽和は飽和ではない
飽和透水係数(Ks)は、現場の飽和透水係数(Kfs)と同じではありません。これは、実験室で飽和透水係数を測定する場合、土のコアを完全に飽和状態にすることができるためです。しかし、現場では、土壌を完全に飽和状態にすることは困難です。なぜでしょうか?一般的に上部から浸透する場合、空気の逃げ場がないため、土壌に空気が巻き込まれた状態になってしまうからです(図2)。

この結果、完全に飽和していない状態となるため、現場飽和透水係数(Kfs)と呼ばれます。Kfsは、空気が閉じ込められて水の動きが遅くなるため、通常Ksより低くなります。
透水係数の測定方法
研究者は、多くの異なる実験室およびフィールド技術を使用して、飽和および不飽和の両方の土壌の透水係数を測定します。この記事では、最も一般的な方法のいくつかを紹介します。
研究室テクニック:飽和透水係数
フローセル(Ks):その仕組み
フローセル測定は、通常、ラボに持ち込まれた土壌コアで行われます。乱れていない土壌サンプルや乱れた土壌サンプルを測定しますが、サンプルサイズはフローセルの設計に依存します。フローセルでは、定水位法または変水位法のどちらかの測定手法を使用します。

図3は、典型的なフローセルの仕組みを示しています(他の設計もあります)。土壌コアはフローセルに挿入する前に飽和状態になっています。水源からの水が土壌コアの上部を通過し、定常状態の流量が測定されます。その値を用いて浸透量を決定します。i(浸透率)からKs値(圧力ヘッドの影響が0の場合の代表値)に至るまで、定水位と変水位の両方の技術による補正が行われます。
長所 | 短所 |
---|---|
計算が単純 | 膨張性土壌を封入するのは困難 |
3次元の流れに対する補正は行わない | 現地測定と数値が異なる場合がある |
異なる層で分離できる | 自動化のための追加設備が必要 |
複数サンプルの同時測定が可能 | 専用実験室スペースが必要 |
組み立てが比較的容易 | 表面積が小さい |
フローセルの計算は、3次元(横方向)の流れを排除することができて水が既知の領域を浸透するため簡単です。もう一つの利点は、土壌の層を分離できることです。
フローセルは組み立てが簡単にできますが、装置の自動化はより複雑です。大型の自動化装置を設置し続ける必要があるため、専用の実験室スペースが必要になります。もう一つのフローセルの限界は、膨張性の土壌が湿潤すると、コアに閉じ込められた土壌が膨張し、土壌の孔が圧縮され、土壌特性が変化することです。このため、土壌の透水係数が過小評価される可能性があります。この問題を解決するには、土壌が飽和状態に近いときに試料を採取します。
フローセル(およびすべての実験技術)の問題点の1つは、実験値が現場値と異なることです。圃場では閉じているマクロポアが、土壌コアを採取する際に開いてしまうことがあります。開放された孔の方が水は流れやすいので、透水係数を過大評価する可能性があります。また、小さなソイルコアでは空間的なばらつきが考慮されません。したがって、現場の正確な透水係数を把握するためには、より多くのサンプルが必要です。
KSAT(Ks):その仕組み
METER GroupのKSAT飽和透水係数測定装置はフローセルに似ていますが、自動化が装置に組み込まれているため、測定が簡素化され、スピードアップされている点が異なります。

変水位法と定水位法の両方ができます。KSATは小さな土壌コアを使用し、ビュレットで水流を制御する水柱を備えています(図4)。

ビュレットの中を水が流れて試料の底から入り、試料の上部を越えて流出します。KSATは、水柱からの圧力ヘッドを自動的に測定する圧力センサーを使用しています。圧力センサーからの測定値をコンピュータが受け取り、ソフトウェアが異なる温度で異なる水の粘性変化を補正して自動で計算します。変水位法の場合、圧力変換器が水柱の変化を測定し、ソフトウェアがそのサンプルの流量と透水係数を計算します。
フローセルと同様に、KSATの限界は表面積が小さいことと、試料が閉じ込められていることにあります。そのため、この装置で試料を採取する際にも、同じような配慮が必要です。
KSATの大きな利点は、すべてが自動化されているため時間を節約でき、大きな実験室をあまり必要としないことです。さらに、HYPROPと組み合わせることで、飽和および不飽和の両方の透水係数曲線上のポイントを自動的に生成することができます。その様子をビデオでご覧ください。
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現地測定技術:現地飽和透水係数
リングインフィルトロメーター(Kfs)
現地測定技術を用いることにより、現地で実際に何が起きているかを特定することができます。リングインフィルトロメーターは、薄肉のオープンエンドシリンダーを特定の深さ(通常5cm程度)まで土壌に挿入し、現地飽和透水係数を測定するものです。定水位法または変水位法のいずれかを用いて、水がリング(複数)を通して浸透します。この測定は手動で行われますが、同時に複数の測定を行う自動化システムもあります。シングルリング、ダブルリング(同心円状)など、さまざまなシリンダー配列があります。
シングルリングインフィルトロメーター(Kfs)
シングルリングインフィルトロメーターは、1本の計測筒(図5)を使用し、定水位法または変水位法で水を浸透させます。定水位法の場合、マリオットタンクでリング内の流量と水位を制御するのが一般的です。水がリングを浸透する際、土の中を垂直方向だけでなく水平方向にも移動するため、3次元的な流れを考慮した補正が必要です。

シングルリングインフィルトメーターは、直径が10cmから50cmの範囲で使用されています。リングの直径が大きいほど、より多くの面積を測定することができ、空間的な変動をより的確に説明することができます。
ダブルリングインフィルトロメーター(Kfs)
ダブルリング(同心円)インフィルトロメーターは、大きなバッファーシリンダーの中に1本の測定シリンダーを設置したものです。バッファシリンダーは、測定シリンダーからの流れの発散を防止することにより解析を簡略化することを目的としたものです。理論的には、測定シリンダーは垂直方向の水流のみを測定し、水平方向の水流は測定しません。この方法は変水位法と定水位法があり、同じ圧力勾配を得るためには両方のシリンダーで同じ水位を保つ必要があり、通常多くの水が必要です。

リングインフィルトロメーターの長所と短所
リングインフィルトロメーターは、リングが大きいために空間的なばらつきへの対応が効き、実験室の機器よりも現場の状況をよく伝えてくれます。したがって、モデリングには有用です。しかし、測定には大量の水が必要で、浸透速度を約30 cm/hrと仮定すると、1時間あたり60~100 Lの水を必要とします(高透水性土壌では、300 L/hr以上使用する可能性があります)。また、測定には時間がかかり、リングの大きさにもよりますが、2~3時間は必要であると言われています。
もう一つの問題は、三次元的な流れを補正するために、土壌の巨視的毛管長係数(Alphaと呼ばれる)を推定する必要があることです。このαパラメータを推定する表がありますが、間違えると正確な透水係数の推定ができなくなります。
また、バッファシリンダーは横方向の流れを止める効果がないことが多いです。これは実験室やモデリングによる解析で文献に示されています。ですから、縦方向の流れしかないという前提で計算すると、過大評価になってしまう可能性があります。
SATURO(KFS):その仕組み
METER GroupのSATURO デュアルヘッド・インフィルトロメーターは、2つの異なる圧力ヘッドで浸透を測定する定評のあるデュアルヘッド法を自動化したもので、測定を合理化し、潜在的なヒューマンエラーを回避することができます。

土壌の上に水を溜め、空気圧で2つの圧力ヘッドを作り、ポンプで自動的に正しい水位を維持します。内蔵のプロセッサーが現地の飽和透水係数を機上で自動的に計算するため、データの後処理が不要です。

SATURO 長所と短所
SATUROは、自動化とデータ解析の簡略化を1つのシステムで実現しました。一人で持ち運び、設置できるように設計されており、自動的に正しい水位を維持するため、測定と調整を常に繰り返す必要がありません。
測定には多少時間がかかりますが、リングインフィルトロメーターに比べればはるかに短時間で済みますし、無人で動作します。複数の機器を同時に稼働させることができ、αパラメータを推定する必要がないため、よくある誤差の原因を排除することができます。20リットルの水袋を2つ使用しますが、大きなシリンダーを必要としないため、ダブルリングインフィルトロメーターよりもはるかに少ない水で済みます。
次のウェビナーでは、Gaylon S. Campbell博士が、透水係数の基礎と、SATURO自動デュアルヘッド・インフィルトロメーターの科学について教えています。
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プレッシャーインフィルトロメーター(Kfs)
プレッシャーインフィルトロメーターは、リングの上部にアタッチメントを取り付けることで、リングにかかる圧力ヘッドを制御できる点を除き、シングルリングインフィルトメータに類似しています(図8)。

ユーザーは、単一のヘッドを一定時間適用した後、一定時間高い圧力ヘッドに切り替え、また一定時間低いヘッドに切り替えます。これを、両方の圧力ヘッドで準定常的な浸透速度が得られるまで繰り返します。異なる圧力ヘッドでの浸透率は、α値やソープティビティなどの値を推定するために使用することができます。
長所 | 短所 |
---|---|
(α)を測定することでKfsの解析が向上 | 測定装置がより複雑になる |
ソープティビティやマトリックフラックスポテンシャルの測定にも使用可能 | マルチヘッド方式は時間がかかる |
自動化されていないため、作業が必要 |
この技術により、多重ヘッド解析が可能となり、収縮率やマトリックフラックスポテンシャルなど他の測定も行えるようになります。さらに、巨視的毛管長係数(α値)を推定ではなく測定することができるので、3次元の流れを補正する際に誤差の原因となり得るものを取り除くことができます。
しかし、測定装置はより複雑です。特に圧力ヘッドの切り替えには、より多くの自動化が必要です。また、両方の圧力ヘッドで浸入速度を定常状態にするのに時間がかかります。
ボアホールパーミアメーター(Kfs)
ボアホールーミアメーターにはいくつかの設計があるが(本稿では割愛)、ここではその基本を述べます。

ボアホールパーミアメーターは、掘削孔の水深を確認する際に誤差が生じないよう、定水位法を採用しています。ボアホールパーミアメーターの使用方法は、任意の深さまで掘削し、ボアホールパーミアメーターを掘削孔上に設置し、マリオットタンクを挿入して掘削孔内の水頭を一定に保ちます。そして、流入量を計算し、定常状態を待って、その値から透水係数を計算し、その後、三次元の流れに補正します。掘削孔内の水位や圧力頭を変化させることで、シングルヘッド、マルチヘッドの解析が可能です。
長所 | 短所 |
---|---|
(α)を測定することで、Kfsの解析が向上する(マルチヘッド解析の場合のみ) | 表面積が小さい |
異なる土壌層の分析ができる | 測定時間が長い |
ソープティビティやマトリックフラックスポテンシャルの測定に使用可能 | 潜在的な分散とシルト化 |
測定面を視認できない |
マルチヘッド解析の場合、パーミアメーターを使用するとαを測定できるため、誤差の原因となる可能性がなくなり、収縮率とマトリックスフラックスポテンシャルを測定することができます。また、大きな掘削が必要なリングインフィルトロメーターに比べ、小さな穴を掘るだけなので異なる土層を測定するのも簡単です。
パーミアメーターは小さな表面積しか測定できないため、現地を評価するためにはより多くの測定が必要です。また、特にマルチヘッド解析を行う場合は、測定時間が長くなります。
もう一つの問題は、掘削孔内部の分散とシルト化です(オーガが切削する際に表面を汚してしまうことがあります)。これが孔を塞いでしまい、水を通すことができなくなり、過小評価の原因となります。分散やシルトの発生は、視界がないため分かりにくいです。しかし、このような問題を軽減するためのアプローチもあります。
研究室のテクニック: 不飽和透水係数
フローセル(K(Ψ))
フローセルも不飽和透水係数(K(Ψ))の測定に用いられますが、飽和透水係数と異なり、測定にはテンシオメータが必要です(図10)。

水は水源から試料を通り、ソイルコアから外に流れます。2つのテンシオメーターが水ポテンシャルを測定し、ユーザーは不飽和状態で土壌が水を透過するように低流量から高流量を制御します。両方のテンシオメーターが同じ水ポテンシャル(土壌の吸引力)を測定するまで、一定の流量を維持します。これらの測定値と流量を用いて、その特定のポテンシャルにおける不飽和透水係数を求めます。水分保持特性を得るために、ユーザーは土壌コアの水分量も測定します。この手順を繰り返すことで、不飽和透水係数曲線に沿ったさまざまなポイントを決定することができます。
長所 | 短所 |
---|---|
水の透過と保持特性を同時に計測する | 一定の流量を維持する方法が必要 |
同一土質カラムの飽和・不飽和流動パラメータの推定 | 複雑な操作 |
フローセルにより、不飽和透水係数と保持特性を同時に測定し、土壌の部分的な土壌水分放出曲線を作成することができます。さらに、同じ土柱で飽和と不飽和の両方の流動パラメータを測定することができます。
しかし、この技術では流量を制御・変更するためのポンプが必要で、操作も複雑です。また、フローセルは研究室にスペースが必要で、自動化には複雑な計測器が必要です。
蒸発法 (K(Ψ))
蒸発法は、1968年にWindによって初めて紹介されました。この方法では、異なる深さにテンシオメーターを挿入した土壌コアが必要です。初期飽和状態のコアは、上部が開いていますが下部が閉じており、表面からの蒸発のみを許容します。これにより、コア内にマトリックポテンシャル勾配が形成されます。時間が経つにつれて水が蒸発し、土壌コアの質量と勾配が測定され、マトリックフラックスポテンシャルや不飽和透水係数が算出されます。この手法では、マトリックヘッドと水分量を同時に測定するために一定の蒸発速度が必要であり、不飽和透水係数の測定と土壌水分放出曲線の生成の両方を可能にします。
HYPROP(K(Ψ))
METER GroupのHYPROP 2水分特性曲線・不飽和透水係数測定装置は、Wind/Schindler蒸発法を簡略化した実験装置です。

HYPROPの内部です。表面だけが開放された土壌コアの中に、異なる高さの2つのテンシオメーターが設置されています(図11)。

HYPROPは天秤の上に置かれ、時間の経過とともに蒸発する土壌コアの質量を測定します。これにより、土壌の水分保持特性と不飽和透水係数の両方が生成されます。不飽和透水係数は、Darcy方程式(式4)の逆行列を使用して計算されます。

長所 | 短所 |
---|---|
水の透過と保持特性を同時に計測する | 飽和状態でのK(Ψ)データの信頼性が低い |
測定が自動 | 慣れるのに時間がかかる |
優れた測定分解能 | 脱水特性のみ |
フローセルと比較した場合のHYPROPの利点は、全水分範囲にわたって完全に自動化された測定ができることです。HYPROPは、他の作業を行っている間に不飽和透水係数の曲線を自動的に生成するため、時間を節約することができます。飽和付近を除き、高い分解能(200データポイント以上)で透水特性と保水特性が同時に得られます。KSAT(飽和領域)、WP4C(乾燥土壌)と組み合わせることで、完全な土壌水分特性曲線を生成することができます。土壌水分特性曲線については、次のビデオで詳しく説明しています。
HYPROPは慣れるのに時間がかかりますが、テンシオメーターの充填方法を一度覚えてしまえば、簡単にセットアップできます。そして、一度セットアップすれば完全に自動化されます。なお、HYPROPは蒸発法であるため、脱水(水を失う)特性のみを測定しますので、吸水(水を加える)特性とは異なることがあります。
現地技術:不飽和透水係数
テンションインフィルトロメーター(K(Ψ)
テンションインフィルトロメーターは、不飽和透水係数のみを測定します。多孔質板を土壌上に置き(図12)、マリオットを含むタワーで制御される吸引力で水を浸潤させます。

空気チューブを水中に深く挿入し、空気チューブに吸い込まれた水の代わりに空気を吸い込むエネルギーを上げることで、負のサクションを制御します。この手法では、非定常的な方法と定常的な方法のどちらでも解析が可能です。
非定常法:時間の経過とともに変化する浸透量を測定し、定常状態へ外挿する。
定常法:時間の経過とともに浸潤速度が定常状態になる。
テンションインフィルトメーターは、強制的に吸引して土壌に水を浸透させるので、異なる負のサクションで浸透量を測定し、間隙の大きさを分離することができます。サクションが高いほど孔径が小さくなければ水を引き抜くことができません。また、3次元の浸透技術なので、流れの3次元解析が必要です。
長所 | 短所 |
---|---|
サクションを制御 | 定常法は時間がかかる |
円盤を大きくすることで、より大きな空間変動を考慮 | 3次元の流れを補正するため、土壌の特性を推定する必要がある |
ソープティビティ、撥水性の評価 |

テンションインフィルトロメーターの利点は、サクションを制御することで、特定のマトリックスポテンシャルでの不飽和透水係数を測定できることです。より大きなディスクを使用することで、より多くの空間変動に対応することができます。しかし、大きな孔は空間的変動の主な原因であり、非常に低いサクションで排水されるため、これは重要ではないかもしれません。テンションインフィルトロメーターは、ソープティビティと撥水性の推定にも使用され、森林火災後の状況における疎水性の研究に有用です。
定常法は時間がかかり、非定常法と同様に不正確である可能性があります(特に、非常に乾燥した土壌で初期浸入能が高い場合)。そのため、複数回の測定を行うのがよいでしょう。この手法では、3次元的な流れを補正するためにα値を推定する必要があり、これが誤差の原因となる可能性があります。しかし、全体としては、良い現場技術です。
透水係数測定の注意点
圃場の土質が同じであれば同じ土壌透水係数の値が使えるとは思わないでください。特に、土地利用や景観上の位置づけが異なると、そのようなことはありません。ある研究者は、同じ土壌タイプでも透水係数が劇的に変化することを発見しました。彼のサイトは、原生草原、改良牧草地、慣行耕作地と様々であり、3つの圃場すべてにおいて景観の位置が大きく変化していました。

図13は、頂上、バックスロープ、フットスロープのいずれにおいても、牧草地と草原で同じ傾向が見られることを示しています。後斜面では土壌の透水係数が高く、麓斜面では最も低い値を示しています。これは、カチナ効果(山頂からの溶質の溶出と麓斜面での溶質の沈殿による土壌の透水特性と化学組成の変化)によるものであることがわかりました。興味深いことに、この傾向は慣行耕作地では見られず、おそらくこの場所が攪乱されていた(定期的に耕作されていた)ことが原因であると思われます。
どこを測定するのか?何回測定するか?
1つの戦略は、実際の空間変動の推定値を得るために、圃場全体でバルクECを測定することです。この情報があれば、圃場の空間変動を網羅するために、どこで何回測定すればよいかを決定することができます。図14は、バルクECを測定するためにEM38装置を使用して作成した圃場のECマップです。

この図は、研究者が圃場をセクションに分け、どこで測定を行うかを決定するのに役立ちました。この場合、研究者は選んだ各ポイント(白い十字)で、圃場の飽和透水係数を3回測定することにしました。
透水係数の測定方法をさらに深く掘り下げる
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