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キャンディや菓子類の水分活性

水分活性は、水分が食感や潮解、相転移、原材料間の水分移動にもたらす影響について重要な洞察を与えてくれます。

サーカスやピーナッツとは全く関係のない、バナナのような不思議な味わいを持つオレンジ色のソフトキャンディ、サーカスピーナッツを考えてみましょう。

水分が適切でないと、サーカスピーナッツはお菓子の失敗作となってしまいます。水分が高すぎると、袋の中でキャンディ同士がくっつき、不格好な状態になってしまいます。水分が低すぎると、硬くて食べにくい接着剤のようになり、顎がくっついてしまいます。しかし、水分の問題は、サーカスピーナッツに限ったものではありません。水分測定を正しく行うことは、ほとんどすべての菓子製品にとって重要です。水分を測定・監視する最も有力な方法は、水分活性を測定することです。

食感や味を追求した製造

キャンディーの多くは、噛みごたえ、サクサク感、滑らかさ、粒々感、粘着感、柔らかさなど、独自の食感をもっています。同様に、独自の味があります。そして、食感と味が組み合わさることで、顧客体験が形成されます。

水分は、菓子類の食感に重要な役割を果たします。そして、食感や味を最大限に引き出すことができる理想的な水分活性の範囲が存在します。製品の水分が適切な範囲にない場合、お菓子のバッチ全体が台無しになり、余計な時間と経費がかかることがあります。水分活性は製品の食感と密接に関連しているため、独自の食感を得るために必要な水分活性の仕様を設定することは難しいことではありません。

水分活性は水分含量よりも正確

水分活性は、より正確な水分測定に役立つことがあります。菓子類の多くは、比較的水分含量が少ない傾向にあります。例えば、サーカスピーナッツの水分は5%程度です。製造元のSpangler Candy Company社によれば、サーカスピーナッツの水分含量は4.4~6.3%の範囲内にあることが理想です。しかし、その範囲はわずか1.9%で、水分含量計で正確に測定するのは難しいでしょう。

幸いなことに、水分含量が少ない菓子類は、小さな水分含量の変化で、水分活性値が大きく変わる傾向があります。例えば、サーカスピーナッツの場合、水分含量4.4%のときの水分活性は0.450aw、6.3%のときは0.600awであり、その範囲は0.150aw、つまり15%あります。

これら2つの方法の精度を比較すると、水分活性は水分含量に比べて15倍ほど精度が高いといえます。

水分活性で水分移動を予測する

製造し、袋詰めした時点で菓子類の食感や味が良かったからと言って、その状態がいつまでも続くとは限りません。

保管されている間であっても、水分は高いエネルギーから低いエネルギーへと移動し続けます。やがて、水分はフィリングからコーティングに(またはその逆に)といったように原材料間で移動し、食感の変化やひび割れ、鮮度の低下などが招き、もはや販売できない状態になってしまいます。このような問題を避けるためには、原材料の配合を検討する際にそれぞれの原材料の水分活性を測定し、水分活性を調整、均等化する必要があります。顧客が製品を購入し、封を開けるまで、製品の食感や味を保つためです。

表1. 一般的なキャンディーの水分活性および水分含量の平均値
商品名
(米国製品)
水分活性の平均値
(露点式装置で測定)
水分含量の平均値
(%)
Translucent Bears 0.70 14.25
Super Mario Assorted Fruit Flavored Snacks 0.70 16.28
Strawberry Twists 0.69 13.89
Evil Twins (half sweet-half sour) 0.60 11.36
Mott's Original Fruit Flavored Snacks 0.67 10.59
Watermelon Rings 0.66 10.03
Original Red Twists 0.64 12.89
Licorice pieces Strawberry 0.59 8.49
Opaque Bears 0.58 8.01
Laffy Taffy 0.56 5.20
Starburst Fruit Chews 0.55 2.34
Airhead Chery Fruity Candy 0.54 2.34
Nordic Fish Mini 0.53 5.12
Tootsie Roll 0.51 2.85
Bit-O-Honey 0.45 2.50
Chewy Caramels 0.45 1.87
Salt Water Taffy 0.44 2.07
Original Long-Lasting Chews 0.36 3.93
Lifesavers Butter Rum 0.30 0.28

水分活性で賞味期限の目標を達成する

賞味期限に影響を与える要因は、水分の移動だけではありません。キャンディが古くなると、包装材から水分が失われ、最終的には硬くなってしまうことがあります。水分活性と包装紙の水蒸気透過率を測定することで、製品の賞味期限中に何が起こるかを理解したり、予測したりすることができます。水分活性は、賞味期限を終了させる多くの要因と関連しているため、賞味期限を予測する優れた指標となります。また、配合や包装の研究にも利用できます。

図1
図1. 菓子類の水分含量と水分活性平均値の関係