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灌漑用水管理―あなたが見落としているかもしれない3つのツール

灌漑用水管理システムは、最適な収量と品質を備えた健全な作物を育てることを目的としています。精密な農業戦略を達成する方法は、測定ツールを使って、過潅水と潅水不足との間の完璧なバランスを見つけることです。しかし現実には、水の使用量が増え、養分の利用可能性が低下し、雑草の圧力が高まり、労力が増えることがよくあります。なぜでしょうか。それは、避けようとしている状況を知らず知らずのうちに自ら引き起こしているからです。この記事では、水、肥料、労力、除草剤を最小限に抑えながら、こうした落とし穴を回避する方法を探っていきます。最初に、アンバランスな灌漑管理の事例をご紹介します。

事例 #1 - サッカー場の芝

数年前、METER Groupでは、水浸しになっているスポーツフィールドにセンサーを設置する機会がありました。その競技場はしばしば水たまりができ、芝生の管理を難しくしていました。芝はASTM規格の12インチの土壌層の上にあり、大量の雨が降った後でも芝を美しく、プレーしやすく、安全に保つように設計されていました。目標は水や肥料、労力、除草剤の投入を最適化し、侵略する雑草の圧力を軽減することでした。このサッカー場では、侵略性植物であるイチゴツナギ(Poa)が最大の問題でした。

図1
図1.夏季のサッカー場北端の体積含水率
図2
図2.夏季のサッカー場南端の体積含水率

図1および図2はサッカー場の両端で採取したサンプリングで、いずれも土壌水分量が下降していることを示しており、水分量の測定値はすべて高過ぎで、特に深さ2インチ(この芝にとって根域がある場所)の水分量が高過ぎました。

この土壌の間隙水電気伝導度(ECp)も低く、圃場の両端で土壌内の栄養不足が示唆されました。調べてみると、芝草は以下のような状態でした:

  • 養分利用性が低下 - 芝生の青さに見劣りが見られた
  • 水分が過多 - 多年草のイチゴツナギよりも一年草のイチゴツナギ(Poa)が優位となり、土壌構造が軟弱化していた
  • 根系が浅い - 必要な水を得るために深く根を張る必要がないため

この事例の解決策については記事の後半で検討しますので、ひとまず、2つ目のアンバランスな灌漑水管理の事例を見てみましょう。

事例 #2 - 屋外栽培の大麻

次のグラフは、屋外の大麻畑における土壌水分量の測定結果です。灌漑圃場の設定は理想的で、温室から移植した大麻の株間は1m、各畝間は2mでした。シルトローム土壌の上に敷いた黒いビニールマルチの下に開放式点滴灌漑システムを設置し、15cm、30cm、60cmの位置にセンサーを埋めました。その年は春と夏が暑く乾燥していたため、土壌の水分が限られていましたが、植え付け前に灌漑を行い、60cmのモニタリング深度まで土壌を湿らせました。周囲に設置された防護柵が、微気候を作り出していたかもしれません。

図3
図3.屋外大麻畑の土壌水分量(30cm)

図3は、効果的な水管理を行おうとする場合、土壌の水分量を調べるだけでは不十分であることを示しています。この土壌では、特別な出来事は起こっていないことがわかります。水分量はかなり均等なレベルに維持されていますが、これだけでは全体像が見えてきません。

土壌水分は最適だと思えたにもかかわらず、作物の結果は芳しくありませんでした。この作物は、測定された条件での予想収穫量に比較してバイオマスがほとんど出ませんでした。土壌で何が起きているのかを解明するため、Colin Campbell博士は灌漑管理システムの算定を行い、蒸発散量と比較しました。灌漑システムは、1時間に約0.4mmの水を1日に2~3回のサイクルで散布していました。生産者たちは黒いビニールマルチの下を確認し、土壌は湿っているだけでなく実際には泥状になっていたため、散水量の問題ではないと思い込んでいました。しかし、それは間違いでした。その年の収量は予想をはるかに下回りました。

優れた灌漑水管理のためのビジョン

灌漑を正しく行うには、水をいつ出しいつ止めるかを知る必要があります。これは理論的には簡単な概念です。しかし実際の計算は大変複雑なものになります。この計算のためには、以下の3つの問いへの答えを知らなければなりません:

  1. 作物はどれくらいの水を使用するのか?
  2. 現在、利用可能な水が土壌中にどれくらいあるのか?
  3. 利用可能な水の総量は?

それぞれの問いに答えるためにどのような方法が使われているかを見てみましょう。

3つの問い - 3つの異なるツール

植物が1日に使用する水の量を知るには、蒸発散量を計算する必要があります。植物が毎日どれだけの水を失っているかがわかれば、植物がどれだけの水を摂取しなければならないかがわかるからです。次に、土壌中の水分が植物の生育に最適かどうかを判断するには、土壌の水ポテンシャルを計算する必要があります。気温は人間の快適な温度範囲を示してくれますが、それは、部屋の広さとは無関係です。同様に、水ポテンシャルは土壌の種類に関係なく、その水が植物が土壌から吸収できる水かどうかを決定します。最後に、植物が自由に吸収できる水の量を知るには、土壌水分放出曲線を知る必要があります。この曲線は、水ポテンシャルと水分量の関係であり、植物が利用可能な水の範囲を定義するものです。

ツール #1- 蒸発散量

蒸発散量(ET)については過去のウェビナーで詳しく説明しましたが、このアプリケーションの目的から言えば、蒸発散を計算するために知っておくべきことはほんの少しです。日射により温度と水蒸気損失という形での放熱が存在するシステムには、質量とエネルギーを交換する関係があります。これは以下の方程式で解くことができます。

図4
図4.Penman-Monteith式

図4は、蒸発散量を計算するために使用されるPenman-Monteith方程式です。この方程式は、システム内の他のエネルギー交換を利用して、蒸発と蒸散によってどれだけの水が失われているかを求めます。残念ながら、蒸発散量を直接測定することはあまりできないので、代わりに作物係数から計算します。システムの蒸発散量を計算したら、その値を使って灌漑計画を立てることができます。

基準蒸発散量(ET)を計算する

「でも、どうやって?」これはよく聞かれる質問です。「蒸発散量は、長くて難解な単語を伴う、長い式ですよね。何のために必要なのでしょうか」。実際、ETを計算するのに必要なのは、日射量、風速、気温、相対湿度だけです。METER Groupの『ATMOS 41 複合型気象計測ユニット』または『ATMOS 41W ワイヤレス複合型気象計測ユニット』のような測定器を現場に設置すれば、これらの指標をすべて測定することができ、蒸発散量の計算が非常に簡単になります。蒸発散量が計算されれば、システム内でどれだけの水が失われているかを理解することができ、灌漑によってどれだけの水を追加する必要があるかを知ることができます。

図5
図5.ATMOS 41 複合型気象計測ユニット

先ほどの屋外の大麻の例では、図6を使って、基準作物の作物係数に基づく基準ET(ETo)の計算を理解することができます。

図6
図6.作物の推定損失水量

図6は、基準作物によって毎日どれだけの水が失われたかを示す数字です。大麻の場合、基準作物として用いられる高さ12cmの十分に水を与えられた草とは異なりますが、シーズンを通して成長するにつれ、実際にこの草のキャノピーによく似たものとなりました。屋外で栽培された大麻の事例では、シーズン終盤の測定でも圃場は著しく水不足の状態であったため、収量も著しく低い結果となりました。

基準ETの問題点

基準ETに頼ることの問題点は、全体像の一部しか見られないことです。これは、道路を走る車をイメージすれば簡単に理解することができます。基準ETは、ある方向に向かって走るのを助けてくれるものの、道路の左側を走っているのか、右側を走っているのか、側溝を走り抜けているのかはまったくわかりません。ETは一貫性を保ってくれますが、自分がどこにいるのかを本当に理解するための基準点を示してくれるわけではありません。

このことをよりよく理解するために、サッカー場の事例に戻りましょう。このサッカー場は固有のシルトローム土壌で、灌漑はEToによってのみ制御されています。

図7
図7.ブリガムヤング大学サッカー場の土壌水分量

図7はサッカー場の土壌水分量を示したもので、驚くべき一貫性を示しています。灌漑担当者は、土壌水分量を毎日同じ値まで戻すことに成功しています。つまり、水分量を監視することで、ある方向に向かって走る車のように、土壌水分量を一定に保つことができたのです。それが正しい方向かどうかは、この情報からは判断できません。青い線は最も深い12インチの場所に設置されたセンサーで、根域のはるか下にあります。その線に7月5日、7月14~16日に変動が見られます。これは、その期間にフィールドに過剰な水が供給された可能性を示していますが、どの程度過剰だったのかは教えてくれません。

ツール #2 - 土壌水ポテンシャル

土壌の水分量を把握することは極めて重要ですが、それだけでは全体像を描くことはできません。水分量に意味を持たせるためには、土壌の水ポテンシャルも知らなければなりません。水ポテンシャルというと、最初はとっつきにくい印象を受けるかもしれません。しかし、水ポテンシャルを利用するために、水ポテンシャルのすべての側面を深く理解する必要はありません。同じように、温度計の目盛りがどのように計算されるものかを理解しなくても、どの温度が快適であるかを知ることができます。水ポテンシャルの場合は、水ポテンシャル・スケール(多くの場合、kPaスケール)の中で、植物がどの程度快適かを知るだけでよいです。土壌の水ポテンシャルの計算は、TEROS 21 水ポテンシャルセンサーのような機器を使えば簡単にできます。

図8
図8.TEROS 21 土壌水ポテンシャルセンサー

土壌水ポテンシャルの計算は「水が利用可能かどうか」という問いに答えてくれます。理想的には、青々とした健康な植物にとって最適な量の水分が土壌に保持されているべきです。水ポテンシャルは、植物がどれほど簡単に土壌から水を吸収できるかを説明する測定可能な手段です。

存在する水の量が、特定の作物にとって最適かどうかを知るにはどうすればいいのでしょうか。この概念を理解するには、先に述べた温度比較が理想的です。温度は人間の快適レベルを定義するものであり、熱量を定義するものではありません。熱量とは部屋の中の熱の量です。温度は部屋の中の熱のエネルギー状態です。したがって、温度はその部屋の中での快適さのレベルを定義します。

土壌水ポテンシャルは、植物の快適性を定義することで、植物に同じことを行います。水分量とは、土壌中に植物が利用可能な水分がどれだけあるかを示すものです。一方で、水ポテンシャルは、植物の根域の水の「温度計」のようなものであり、土壌の種類に関係なく、土壌に存在する水を植物が利用できるかどうかを特定します。

 

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EToと 水ポテンシャルを組み合わせる

EToと水ポテンシャルは、それぞれ土壌・植物・水の相互作用を理解するために不可欠な要素ですが、単独ではその有用性の半分しか活用できません。EToと水ポテンシャルを組み合わせることで、植物に最適な水分量があるかどうかを実験的に定義することができます。車の運転の例と同じように、水分量は私たちが向かっている方向を特定し、水ポテンシャルは私たちが進みたい方向であるかを示します。

図9
図9.水分量と水ポテンシャルで全体像を把握する

図9は、水分量と水ポテンシャルの両方の測定値をサッカー場の芝の事例に適用するとどうなるかを示しています。水ポテンシャルによって定義される青色の帯は、芝が土壌から水を抽出できる範囲です。水ポテンシャルのグラフに水分量の測定値を重ね合わせると、その様子が明らかになります。このサッカー場の水分量は一定だったものの、一貫して高すぎたことがわかります。水が満タンに入っているコップに水を注ぎ続けるようなものでした。

水分量と水ポテンシャルの組み合わせが持つ力

水分量と水ポテンシャルを組み合わせることの重要性をより明確にするために、さらにいくつかの事例を見ていきましょう。私たちが水ポテンシャルセンサーを使って行った最初の実験のひとつがこの重要性を示しています。アイダホ州グレース市のジャガイモ畑に測定機器を設置し、水分量測定にはTEROS 11センサーを、土壌水ポテンシャル測定にはTEROS 21センサーを使用することにしました。

図10
図10.米国アイダホ州グレース市のジャガイモ畑の土壌水分測定

図10は2つのグラフから成り、上がジャガイモ畑の水分量、下が水ポテンシャルを示しています。水分量のグラフはシーズンを通してあまり大きな変化を示さず、いかなる問題や困難も示していません。しかし、図10でマトリックポテンシャルと呼ばれる水ポテンシャルは、3つのセンサー(911、906、907)で最適な範囲にとどまりましたが、他の3つのセンサー(910、909、912)では、ジャガイモがストレスを感じる範囲に突入し、永久しおれ点の範囲まで低下しました。

この実験中、3つのセンサーで水ポテンシャルの数値が低下したため、私たちは農家にそれらの場所に水を追加するよう伝えました。ところが農家は、その場所に出向いて土を掘り下げたところ水の存在を確認したので、データかセンサーに欠陥があるに違いないと判断しました。私たちはすべての製品で正確さを追求していますが、機器の故障が常に有効な答えになりうること、あるいは設置方法が間違っている可能性があることは認めます。しかしこの事例では、それぞれの場所の収量と、それらの場所がストレス下にあると測定された日数を比較したところ、データは、この問題の明確な姿を描き出していました。

図11
図11.アイダホ州グレース市のジャガイモ畑の、各圃場の収量および-100kPaを下回った日数を比較したデータ

シーズン終了後、私たちはデータをまとめ、非常に興味深い相関関係の存在を農家に提示しました。そのデータは、収量の少ない場所とストレス日数の多い場所との間に強い相関関係があることを示していたのです。これは農家にとって重要な「アハ・モーメント(重要な気づきの瞬間)」となりました。早速この農家は、すべての畑に水分量センサーと水ポテンシャルセンサーを設置しました。以来この農家は、灌漑水管理戦略において劇的な変化を遂げ、収量は一貫して増加しています。

アイダホ州レックスバーグ市にあるジャガイモ農場の別の例では、EToと水分量の測定値が下のグラフに示されました。

図12
図12.アイダホ州レックスバーグのジャガイモ農場の晩夏におけるEToと散水イベントの測定結果

図12は、EToと散水イベントのデータが互いによくマッチしていることを示しています。もしこれが基準作物であったなら、供給された水はかなり正確であったはずです。しかし、このジャガイモは十分に水を与えられた高さ12cmの草ではないため、この散水パターンがこのシステムで最適であったかどうかはわかりません。

図13
図13.アイダホ州レックスバーグのジャガイモ農場の晩夏における土壌水ポテンシャル

図13は、同じ圃場の同じ時間帯の水ポテンシャル測定値を示しています。1つのセンサー(緑色の線)は、灰色の帯で示された水ポテンシャルの最適範囲のすぐ上にあり、その場所が必要以上の水を得ており、資源を浪費し、土壌から養分を洗い流している可能性があることを示しています。2つ目のセンサー(紫色の線)はより深い場所(30cm)に設置されており、最適範囲内にありましたが、それでもまだ全体的に高めでした。このジャガイモ畑は必要以上に水が供給されていました。生産者は、キャノピーに水が多すぎたために収量に課題が生じたと述べています。この事例では、灌漑管理システムに少し手を加えるだけで、水ポテンシャルを最適範囲内に収めることができ、その過程で資源を節約することができました。

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ツール #3 - 土壌水分放出曲線

前述したように、水分放出曲線は「植物が自由に利用できる水分はどれくらいあるか」という質問に答えるためのツールです。水分放出曲線がこの質問にどのように答えるかを理解するために、道路を走る車の例を使ってみましょう。植物がシルトロームの土壌にあるとすれば、それは車線の幅が非常に広い道路のようなものです。その道路を走るとき、車線からはみ出す危険もなく、左右に蛇行することができます。蛇行しても修正する余地が十分にあります。植物が砂地にある場合、それは車線の幅がとても狭い道路のようなものです。制約が非常に厳しく、ハンドル操作を少しでも誤れば、すぐに危険な領域に入ってしまいます。

図14
図14.3種類の土壌の水分放出曲線

水分放出曲線は、土壌中の水分量と、植物が利用できる水分量を比較したものです。図14のグラフでわかるように、粘土、壌土、砂の水分量と水ポテンシャルの関係は大きく異なります。例えば、このグラフが示すように、水分量が0.2m³/m³、マトリックポテンシャルが-100kPaの場合、粘土質の土壌の植物は永久しおれ点を超えてしまいます。壌土であれば、ちょうど最適な範囲となります。植物が砂地にある場合、水と養分はそのまま土壌を通過し、土壌から流出してしまいます。

土壌が乾燥すればするほど、植物が土壌から水分を吸収することは難しくなります。水分放出曲線はこの関係を説明し、灌漑用水管理システムにおいて植物が利用可能な水の量を推測します。

数年前、私たちは壌質砂土で調査を実施しました。調査中、作物の所有者は灌漑システムが故障したことを知らずにメモリアルデーの休日を含む3連休を利用して帰省し、3日後に戻ってきたら作物が枯れていました。

図15
図15.メモリアルデーの事例における圃場の土壌水ポテンシャルと土壌水分量

図15は、この土壌におけるこの植物の水ポテンシャルの最適範囲(水色の帯)が非常に小さいことを示しています。永久しおれ点(グラフの右側)と過飽和点(グラフの左側)の間には12mmの差しかなく、余分な水は土壌から排出されるだけです。この状況では、作物は毎日6mmの水を必要としていました。灌漑システムが3日間停止していたため、水が供給されなかった期間、土壌は作物が生きていけるだけの水を保持することができませんでした。このグラフは、3連休中に作物が枯れた理由を明確に示しています。

水分放出曲線の適用方法

水分放出曲線をシステムに適用するには、以下の4つのステップが必要です:

  1. 水ポテンシャルの上限と下限を決定する - これは個々の作物と測定する土壌に依存する
  2. 水ポテンシャルの上限と下限に対応する水分量を把握する
  3. 植物の根域の深さ(Zroot)を特定する
  4. 水分量の差を根の深さで乗じる

最大潅水量 = (VWCup - VWClow)Zroot

野外の大麻畑の事例では計算式は次のようになります。

最大潅水量 = (0.16 - 0.08) x 15 cm = 1.2 cm or 12 mm

この事例では水分量とEToのデータは極めて一貫していて、問題を示すものではありませんでした。しかし、それらのデータに水ポテンシャルのデータと組み合わせると、何が本当に問題なのかが非常にわかりやすくなりました。

図16
図16.野外大麻畑の水ポテンシャル測定

生産者はこの作物の水ポテンシャルに注意を払っていなかったため、水ポテンシャルは永久しおれ点である-1500kPaまで急落しました。植物としての大麻草の研究はまだあまり進んでいませんが、大麻草はしおれ点まで土壌から水分を吸収し続けます。しかし、そのような状態が長く続くことは植物にとって良いことではありません。なぜなら、植物はバイオマスを生み出すことから生き残ることへと、すべてのエネルギーをシフトせざるを得ないからです。生産者は8月上旬にこの問題を察知し、1日だけ過剰灌漑を行いましたが、水やりが追いつかず、水ポテンシャルはすぐに再び低下しました。

学ぶべき教訓

生産者は作物から最大限の利益を得たいと願いますが、以前の状況では効果的だった解決策が、現在栽培している植物を傷つけてしまうこともあります。灌漑水管理計画のあらゆる側面において求められることを、その結果まで含めてすべて把握することができなければ、生産者は期待するほどの成功を収めることはできないでしょう。

これら3つのツールは、植物の健康と資源の制約を改善することができます。蒸発散量は素晴らしいスタートになりますが、それだけでは灌漑水管理の全体像を理解するには十分ではありません。EToは私たちの車を一定の方向に走らせますが、それが正しい方向かどうかはわかりません。水ポテンシャルとEToを組み合わせることで、灌漑を「車線の中で」で走らせ続けることはできますが、その車線の中にどれだけの余裕があるかはまだわかりません。水分放出曲線を追加することで植物の快適範囲を特定し、散布すべき水量を把握することができるのです。

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灌漑水管理に関するFAQ

植物が利用可能な水が不足している乾燥地帯において、将来、広い地域で野菜作物の灌漑ができなくなる可能性はありますか。

ニュースを見てお分かりのように、私たちは至る所で水に関する課題を抱えています。私たちは作物の栽培に不可欠な資源を維持するためにどのように前進していくかを考える必要があります。肥料価格ははここ1年で2倍以上に高騰しており、投入資材、水、肥料、農薬の供給にも課題があります。これは、巨大なハンマーですべてを叩き潰すように、すべての課題を一度に解決できるようなものではありません。しかし、気候変動によって乾燥化が進むこれらの地域において、私たちは水のバランスを作り出すことができます。より良い測定を行い、灌漑の方法や改善策を理解することにより、その土地をより良く理解することができます。そしてそれらの測定データを活用することで、水の問題を抱えている乾燥地帯であっても灌漑を続けることができるはずです。そのための方法を考えなければなりません。「植物が少しストレスを感じているようなら、もっと水をやりましょう」というような考え方ではいけません。私たちは植物がどのような状態にあるのかを知るためのツールを効果的に使い、水をやりすぎるのではなく、水やりの方法を改善する必要があるのです。

現場で水分放出曲線を作成することは可能ですか。

先ほどご紹介した芝草の水ポテンシャルの最適範囲の帯は、私たちが実際に現場で作成したものです。私たちはTEROS 12 水分センサーとTEROS 21 水ポテンシャルセンサーを設置し、それらを組み合わせ、現場で水分放出曲線を作成できないだろうかと考えました。もちろん、METER Groupは、研究室で水ポテンシャル、水分量、水分放出曲線を開発するための優れた機器をそろえてます。しかし私たちは現場のデータと研究室のデータを比較してみたかったのです。そのため、実際に研究室に入り、いくつかのデータをまとめました。研究室のデータはいくつかあり、それらは実際にかなりよく一致していました。それで、いろいろな人たちと話を始めたのですが、興味深いことに、多くの人たちが、現場でできることを研究室でやってみようというアイデアを持っていました。概して、現場と研究室のデータは一致しています。では、一致しないこともあるのでしょうか。あります。なぜでしょうか。土の中には根が張っているからです。研究室に持ち込めば、根が乾燥したり、サンプルが圧縮されたり、センサー同士が近くになかったり、センサーが同時に反応しなかったりするかもしれません。事実、水ポテンシャルセンサーは水分量センサーよりも反応が遅いのです。

モデリングと直接測定の長所と短所を教えてください。

直接測定ツールの作成に専念している会社として、直接測定に偏らないようにするのは時として難しいかもしれませんが、モデリングを行い、モデリングと測定値を一致させる必要性は明らかです。この記事で論じたアプローチは、現場での蒸発散量や土壌水の測定と、モデリングや他の測定から予測できることを組み合わせることと同じです。1つの課題は、圃場の1カ所または数カ所で測定しているものの、圃場のすべての場所を測定しているわけではないということです。圃場のどの場所でも正確な水量を供給できるような可変率灌漑システムのようなものを開発するには、十分なテストができないのです。センターピボットのような単一スイッチの灌漑システムでは、圃場内を一定の速度で走行するため、データがあっても圃場内で調整できないことがあります。圃場に水ポテンシャルセンサーのようなセンサーを使用することで、異なる複数の深さに一か所であっても、このモデリング作業を大幅に向上させることができます。水収支の推定、気候条件の追加、水分放出曲線の作成など、これらはすべて現場での作業になりがちです。しかし、畑に行って直接水ポテンシャルを測定することは、これまで私たちが見逃してきたことであり、将来に向けて考えなければならないことだと思います。これまでは、正確で信頼性が高く、手頃な価格でその場で測定できるツールがなかったため、現場で水分量を測定し、水ポテンシャルをモデル化するのが一般的でした。METER Groupの大きなライフワークのひとつは、それを変えることです。

水ポテンシャルは一日のうち何時に測定すべきでしょうか。

この問題では、2つの異なる種類の水ポテンシャルを別々に考える必要があります。植物の水ポテンシャルと土壌の水ポテンシャルです。土壌は昼夜を問わず非常に大きなバッファがあります。ですから、極端に乾燥しない限りは土壌の水ポテンシャルが大きく変動することはありません。植物の水ポテンシャルは昼と夜の間で変動が見られます。植物の水ポテンシャルは蒸発要求量によって変化します。そのため、植物の水ポテンシャルを測定する場合は夜明け前に測定するのがベストです。

水分損失が測定されている場合、EToを測定する必要はありますか。

この質問に対する答えは、イエスでもありノーでもあります。水ポテンシャルセンサーを設置し、EToを使用すれば確かにうまくいくでしょう。そのため、ツール1とツール2について説明しました。EToは作物係数を提供します。EToは全く必要ないと説得力を持って主張する人もいました。土壌中の水分量と水ポテンシャルを測定すれば、土壌から排出される水の量は、EToが拾っている水の使用量と同じになるはずという主張です。私たちがこれまで見てきたのは、水分放出曲線を得るために水分センサーと水ポテンシャルセンサーを埋設することで、より完全な実態を把握できるということです。多くの場合、すべての圃場に気象観測機器を設置する必要性が認識されているため、そのコストが問題になります。私たちの研究では、すべての圃場にATMOS 41あるいはATMOS 41 Wが必要だとは考えていません。むしろ、私たちは半径15キロごとにATMOS 41を使用しています。そうすれば、1つのATMOS 41でその地域のいくつかの圃場のEToを取得し、その特定の圃場の水分量を使用して計算を微調整することができます。